吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

感染列島

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 勝手にシリーズ「おうちで映画を見ようシリーズ」、4作目。

 本作の世評はそれほど高くないらしいが、今見ると非常にリアルで恐ろしい。演出の甘さが指摘されることもあるが、それとても悲劇を強調するためにはこのぐらいでいいと思える。

 2008年製作の本作の舞台は2011年の日本。当然、東日本大震災のことは想定に入っていない。もしこの映画の通りに実際に2011年にパンデミックが起きていたら、想像を絶する大惨事になっていたことであろう。

 この映画の発端は東南アジアの村で感染が起きたことによる。それからしばらくして村人を殺した正体不明のウィルスは日本に入って来ていた。やがて起きる壮絶な院内感染、爆発的感染。そして異様な死亡率の高さに都市機能もマヒしていく。。。。

 大規模病院にまずは感染者が運び込まれ、院内感染もここから起きる。スタッフミーティングで医者や看護師がずらりと並んでいる様子に、思わずわたしは画面に向かって「3密やんか!」と指さし絶叫してしまった。「マスクしてないやんか!」「もっと離れて!」「素手で触ったらあかん!」と何度も画面に吠えつつ見ている、という興奮状態(^^;)。

 でもまあ、患者に接するときはもちろん完全防御状態の医療スタッフたちなのだが、それでも血反吐を吐いて死んでいく患者からは次々と院内感染が広がる。佐藤浩一なんかあっという間に死んでしまって、ほとんど死ぬために出演したようなもの。

 その他、登場人物が次々に死んでいくので、「なかなかやるなぁ」と思わせる。いくつものシーンが今起きていることに重なるため、見ていて他人事と思えなくなる。力づくのロックダウンなんて、今の政府はしない(できない)が、この映画の中では軍隊(自衛隊か)を使っての都市封鎖が行われている(わたしは力づくのロックダウンを支持しているのではなく、補償のない自粛など笑止と思っているだけ)。その一方で描写がぬるいと思えることもいくつもあって、それはやむを得ないことだろう。まだ実際に誰も経験したことのないことがらを想像して作ったストーリーなのだから。でも、それにしてはかなり緻密なシミュレーションがなされているように見受けられる。

 感染者への差別や、感染源を疑われる家への投石やいじめなど、いま現実に起きていることが映画の中でも起きている。ただ一つ不思議なのは、このウィルス感染がなぜかほとんど日本国内だけで収まっていることだ。2020年のウィルスは世界中に蔓延しているのに、2008年だとそういう設定は考えられなかったのだろうか。

 WHOから派遣されてきた美しき小林医師(壇れい)と主人公・松岡医師(妻夫木聡)の淡い恋愛もからめて、けっこう甘めの味付けがされている。壇れいは最後の最期まで美しい。化粧が落ちたり剥げたりやつれたりしない。実に映画的である。

 この映画をいま見たことは正解だ。今でしょ、今。映画のように1000万人も死んでないし、そんな予測もないのだから、もうちょっと冷静になるべきだ。買い占めとかイジメとか差別とか、不良品の布マスク2枚とか、あほみたいな話は現実の世界のほうに多いね。(Amazonプライムビデオ)

2008
日本  Color  138分