吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ちょっと今から仕事やめてくる

f:id:ginyu:20200101003547p:plain

 ブラック企業の営業マンとして働く若き主人公が疲れ果てて思わず駅のホームから線路に倒れこみそうになった瞬間に彼を助けた人間は、超久しぶりに会う小学校の同級生だった。その後、飲み屋に直行して乾杯した二人は徐々に仲良くなり、死ぬほど苦労していた主人公もやがては大きな契約を取れるようになるが。。。。
 というお話。ちょっとファンタジー色も混じっている。久しぶりに会った同級生のヤマモトが実は本当の同級生でなかったことが発覚し、それどころか彼の実在すら疑われるようになるというサスペンスっぽい展開もある。
 そんなことはともかく、一番気になるところは、主人公がどんなに疲れ果てても同僚に助けを乞うこともなく、パワハラ上司の支配下にあるだけ、というところ。労働組合を作って闘うという発想がそもそもないのだ。組合が無理でも、会社のハラスメント相談窓口に駆けこむべき案件なのだが、もちろんブラック企業だからそういうのもないのだろうなぁ。
 なので主人公の最終判断は「ちょっと今から仕事やめてくる」しかない。逃避行以外に救いがないという事実は救いがない。
 「おっさんずラブ」で理想の上司を演じた吉田鋼太郎がここではパワハラが服着て歩いているような上司を思う存分演じている。この落差が面白かった。
 これはもちろん労働映画のひとつ。こういう労働はつらい。 (Amazonプライムビデオ)
 2017
日本   114分 
監督:成島出
原作:
北川恵海
脚本:
多和田久美、成島出
音楽:
安川午朗
出演:
福士蒼汰工藤阿須加黒木華森口瑤子池田成志小池栄子吉田鋼太郎