ボクサーの映画って本当は好きじゃないのだ。好きじゃないのに、なぜかうっかり映画を観てしまって、「ロッキー」なんて感動してしまって、ついつい続編もそのまた続編も見てしまうという変なやつがわたし。嫌よ嫌よも好きのうち?
で、またしてもうっかり見てしまったよ、ボクサーの映画。で、ついつい感動してしまったわ。これは前後編300分を超える長い話で、そのうえそれをiPadで通勤電車の中で見るという小刻み鑑賞だからえらく時間がかかってしまったが、それでも感動したから、もしもこれを映画館で見ていたら本格的に感動したんじゃないかという恐れもあるぐらい。
何がよかったのかと反芻しているが、やっぱり菅田将暉の迫力。そしてヤン・イクチュンの哀しい瞳。二人とも熱演でどちらにも演技賞をあげてほしいと思っていたらやっぱり菅田将暉は本作で日本アカデミー賞主演男優賞を獲った。
母子家庭の不良少年と父親から虐待されている吃音の在日韓国人という二人が出会い、ボクシングを通じて兄弟のように友情を育んでいく。その過程がじっくり描かれていて、さらにこの二人の因縁話が(ちょっとできすぎ)盛り上がっていくと、運命の決戦を迎える。こういうストーリーの山場づくりが実にうまい。
暴力的な人間がボクシングに出会うことによって暴発する力を努力へと変換し、スポーツに賭けていく様子は清々しい。復讐心や金や名誉が欲しいという単純な動機でもいい、トレーニングに励む姿には感動する。菅田将暉が本当に筋肉をつけていき、ヤン・イクチュンが減量していく様子が目を見張る。
気に入らないのは学生団体「自殺研究会」、これ必要なトピックかな? 時代を2021年のテロが吹き荒れる時代に設定していることと関連があるのかもしれないがドローン自殺とかちょっとびっくりの展開にはやりすぎと感じた。
ところで本作は図書館員が登場する、図書館映画でもある。大事な役柄ではないけれど、健二が助ける妊婦は図書館員である。(Amazonプライムビデオ)