ある事件をきっかけに仕事と住居を失った若き介護ヘルパーが、次々と老人をたぶらかして押しかけヘルパーになって食いつなぐというブラックコメディ。
後半にいくほどダレてきて、特に津川雅彦じいさんの独白は認知症老人の特徴を出すために何度も同じセリフを繰り返させるのだが、これがしんどい。そこを狙った演出ということはわかるが、正面からのアップでこういうのを映画館で見たいかな? 語っている内容が「戦争なんてひどいもんだ」という反戦ものであるところが皮肉かもしれない。なんといっても”あの”津川だからねぇ。
しかし、前半はかなり面白かった。介護ヘルパーのさすらいの旅路、ならぬさすらいの老人ハンター。こういう題材は新鮮だし、主演の安藤サクラの自然体の演技がうますぎて舌を巻く。あののっぺりとした顔でアルカイックスマイルみたいな笑顔を見せられると、老人はつい心が緩むんだろうなあと説得力にあふれている。拝みたくなる顔といえばいいのか。
巧みに社会問題を練りこむ脚本もうまいし、伏線もあって最後はその回収にけっこう驚く。さすがに3時間は長いという気がするが、話がどう展開するのか先が読めないだけに飽きることはなかった。こういう快作もできるようになったのか、日本映画。しかし女の魅力は家事・介護、結局そこか。(U-NEXT)
196分、日本、2013
監督・脚本・原作:安藤桃子、エグゼクティブプロデューサー:奥田瑛二、音楽:TaQ
出演:安藤サクラ、織本順吉、木内みどり、土屋希望、井上竜夫、東出昌大、ベンガル、角替和枝、浅田美代子、坂田利夫、草笛光子、柄本明、津川雅彦