独特のおかしさが漂う、北欧のコメディ。
イケアの創業者イングヴァル・カンプラードが実名で登場して誘拐されてしまう、というびっくり仰天もので、こんな映画がよく作れたもんだとあきれるやら可笑しいやら。この映画でイケアはこき下ろされているんだか持ち上げられているんだか。
素朴な疑問:ノルウェー語とスウェーデン語って通訳なしで通じるの? そもそもこの映画の登場人物たちはノルウェー語でしゃべってるんかな。
家出少女エバの母親は新体操の選手だった。かつて北スウェーデンのチャンピオンだったという過去の栄光が忘れられない。カンプラードを誘拐する主人公ハロルドだって過去の栄光が忘れられない一人なのだ。彼はかつて町一番の家具店を経営していたのだから。なのに、隣にイケアが出店したためにあっという間にハロルドの高級家具店は潰れてしまった。にっくきイケア! ハロルドはずっと怒っている。イケアの創業者を誘拐してやる! しかしどうやって? と思っていたら、なんと、誘拐犯ハロルドが運転する車の前でカンプラードの車がエンストを起こしているではないか。なんという都合のいいお話なんでしょう(笑)。こうして行き当たりばったりの無計画な犯罪は実行に移されたのだった。
ま、カンプラード自身もこの誘拐事件を楽しんでいるふうだし、ハロルドは所詮じいさんだし。途中で拾った少女エバもええかげんだし。その母親はもっとええかげんだし。この人たちよく生きているなぁと感心するやら、負け組ぶりが潔いというべきか。スウェーデンは競争社会だからね。これ、ノルウェーからスウェーデンに攻め入って結局撃退されてすごすごと戻ってくる、っていう映画だから、現実を反映しているのではないか。
最後までゆるーく面白かったけれど、結局何が言いたいのかよくわからなかった。ラストはほろ苦いね。(U-NEXT)
HER ER HAROLD
88分、ノルウェー、2014
監督・脚本:グンナル・ヴィケネ、音楽:ヤノーヴ・オッテセン
出演:ビヨーン・スンクェスト、ビヨーン・グラナート、ファンニ・ケッテル、グレテ・セリウス、ヴィダル・マグヌッセン