吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

お嬢さん

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 劇場公開版は何か月か前に上映が終了したのだが、特別篇のディレクターズカット版が1週間限定でかかるというので、見てみた。平日の昼間なのにそこそこ入りがいい。韓国版「アデル、ブルーは熱い色」か。女同士のラブシーンの濃厚さにR18指定となりました。主人公の童顔ぶりもアデルと同じだし、かなり意識したのではないか。
 原作はイギリスの小説だが、パク・チャヌクはそれを日帝統治下の朝鮮に置いた。このこと自体にどんな意味があるのかと思わず勘繰ってしまうのは悪い癖だろうか。物語は華族の令嬢をだまして莫大な財産をせしめようという朝鮮人詐欺の話なのだが、それが三部構成で語られるうちに、誰が騙され誰が騙しているのかわからなくなる、という羅生門形式の物語。そしてその合間に描かれる強烈なエロス満載映像がパク・チャヌクの今までの路線と違うと思わせる。いや、最後は結局今までのパク・チャヌクの残酷シーンへと回帰するのだが。あー、こわ。
 巨大蛸は「北斎漫画」(1981年、新藤兼人監督)を思い出させる。この映画には日本の春画がふんだんに登場し、エロごころを刺激する。書庫、朗読、という図書館映画でもあるのだが、よゐこに見せられない図書館映画でもあるので、ちと困った。書庫の場面の壮観ぶりにはほれぼれする。とにかく美術は凝っているので、一見の価値あり。あとは、童顔のキム・テリの肉弾演技が見ものです。

THE HANDMAIDEN
145分、韓国、2016
監督:パク・チャヌク、原作:サラ・ウォーターズ『荊の城』、脚本:パク・チャヌク、チョン・ソギョン、撮影:チョン・ジョンフン、美術:リュ・ソンヒ、音楽:チョ・ヨンウク
出演:キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン