吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ジゴロ・イン・ニューヨーク

 先ごろ映画館でウディ・アレン監督「教授のおかしな妄想殺人」を見たが、これはいまいちだったので、お口直しにこれまでアップしていなかったウディ・アレン作品をいくつかご紹介。

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 これ、ウディ・アレンが監督じゃなくて、ジョン・タートゥーロが監督だったとは、今頃気づいた。どうりでどこかそこはかとなく切なくわびしい感じがしたのはアレンの作品ではなかったからかも。

 売春夫をすることとなる花屋の店員フィオラヴァンテと、彼を売り込むポン引きのマレーのコンビが美しい人妻をうまくいいくるめて売れ行き好調。しかしやたらしゃべくり倒すマレー(ウディ・アレン)に対して寡黙なフィオラヴァンテ(ジョン・タートゥーロ)というバディ(二人組み)は、どちらもユダヤ人であり、引っ掛けた未亡人もユダヤ人で、あとは宗教が絡んで意外な方向へと話が転がり始める、、、、

 巻頭は勢いがよくてよかった。すっかり年老いたシャロン・ストーンがこの歳になってもなお裸で売るとは驚き桃の木である。でもまあ、「ラブレース」の時に比べたらよっぽど綺麗なので、やっぱり女優は化けるもの、とよくわかった。

 映画の前半のスピード感がいつの間にか癒し系モードに変わるころ、フィオラヴァンテはその優しさで愛に飢えた女性を包み込む、とっていいおじさんに変身しているではないか。そのうえ、ユダヤ教徒と恋に落ちてなにやら抜き差しならない事態に。というあたりで眠くてたまらないので後はもうほとんど覚えていないんだけれど、

 要するにウディ・アレンの舌技がさえる前半のマシンガントークがなりを潜めてジョン・タトゥーロ色が濃くなると、どんどん面白くなくなる、という仕掛け。それでもユダヤ教徒の独特の生活習慣などが興味深くてついつい最後まで見てしまうのである。ユダヤ教についてもっと深く知っていれば面白く見られただろうに、残念である。

 「誰もわたしに触れていないの」と泣く中年女の悲しさが身にしみた。(レンタルDVD)

FADING GIGOLO
90分、アメリカ、2013 
監督・脚本: ジョン・タートゥーロ、製作: ジェフリー・クサマ=ヒントほか
出演: ジョン・タートゥーロ、ウディ・アレンヴァネッサ・パラディリーヴ・シュレイバーシャロン・ストーン