予告編も作品の一部であるということが実感できる作品。主人公が渓谷の岩に挟まって動けなくなるということは観客の誰もが知っている。そのシーンは予告編で何度も見たから、映画の巻頭から「いつ挟まるんだろう」とドキドキしてしまう。そして、最初から危なっかしいシーンが続出するので、ものすごく緊張感がみなぎる。予告編で出るぞ出るぞ、と見せておいて「出た~!」というお化け屋敷みたいな展開にすると、映画は面白いね。
主人公の青年アーロンが自分の腕を切り取って脱出したという結論もわかっていて見ているというのに、全然緊張感が途切れない。よくできた映画だ。タイトルバックの「127」という数字が登場する瞬間もうまい。
冒頭だけアーロン以外の娘たちが登場するが、あとはほぼ一人芝居、しかも岩に挟まったまま、という極限の反映画的な映画というのに、現実と回想と妄想が交錯する演出がいいので、まったく飽きずに最後まで見ることができた。
腕が挟まって身動き取れない、という状況のとき、普通どうするのだろう? ふつう、あまりそういう状況もないだろうけれど、いざ挟まった時に何を思い、どんな行動をとるだろう。ここにおいてこの映画は尋常ならざる状況に陥った主人公がとった驚くべき行動について、彼が囚われている狭い空間を飛びぬけて彼の妄想と想像と悔悟とを描いていく。映画的な面白さもさりながら、たった一人の闘いに果敢に立ち向かう青年への共感と畏怖の念を抱かざるをえない。
ところで、ジェームズ・フランコとヘイデン・クリステンセンの区別がつかないわたしって顔面認識力ゼロでしょうか…。(レンタルDVD)
127 Hours
94分、アメリカ/イギリス、2010
監督: ダニー・ボイル 、原作: アーロン・ラルストン 、脚本: ダニー・ボイル、 サイモン・ボーフォイ、音楽: A・R・ラフマーン
出演: ジェームズ・フランコ、 アンバー・タンブリン、ケイト・マーラ