吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

キャピタリズム〜マネーは踊る

 2年前にDVDで観た映画の感想を今頃アップ。なにしろアップしておかないと、自分の見た映画のタイトルもストーリーも何もかも忘れてしまうからね。備忘録として書いておかないと、何度でも同じDVDをレンタルする羽目になる(~_~;)。当時のメモを元に感想を再現してみるけれど、この映画、確か息子達と一緒に見て彼らはケタケタ笑っていたのではなかったかな。いや、それは別のムーア映画だったっけ。とにかくもう記憶が遠い…


 いずれにしても、ドキュメンタリーとしてはちょっと長すぎるんではないの? 途中で厭きてしまって、後半かなり爆睡。

 ドキュメンタリー監督のマイケル・ムーアが今度は資本主義批判を展開する。しかし、その知的程度はいくらでも論駁可能な稚拙なものだ。この映画を連合がバックアップして支援キャンペーンを張っていたから、てっきり無料招待券が回ってくるかと期待したのに、だめだった。そういう意味でちょっと悔しい映画。

 マイケル・ムーアも有名人になってしまったので、アポなし突撃インタビューができなくなってしまった。 その点、初期の作品のようなパワーがない。しかし相変わらず楽しい演出を施すため、ついつい笑ってみてしまう。ほんとは笑えるような話ではないんだけれどね。

 驚いたことが二つ。一つは、パイロットの年収のあまりの低さ。これはどこの会社もそうだというわけではなかろうが、この映画に登場するパイロットたちの年収が2万ドルに達しないというのは俄には信じがたい。正規の収入だけでは生活できないから、アルバイトしているという。まるでうちの職場みたいではないか。 「会社は、好きで仕事をやっている人間を食い物にしている」とパイロットは発言する。確かに専門職は「好きな仕事だから」と、低賃金でも働いてしまう。図書館司書などその典型だ。どんなに時給を低くしても働きたい人は後を絶たない。

 そしてもう一つの驚きは、キリスト教者たちが「資本主義は悪魔だ」と証言する場面。資本主義は聖書に反するだって? 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」はどうなったのだ? あ、映画に登場したのはプロテスタントではなくカトリックだったかしら、、、忘れた。
 イスラム教徒にとって資本主義が悪魔だというのも、やはりイスラム教も元をただせばキリスト教の聖書も経典の一つなのだから、同じ論理か。などと、本筋とあまり関係のないところでひっかかるわたし。

 しかしいくら「資本主義はだめだ」と叫んでも、具体的な代替案もないし、これでは大人を納得させることはできないのではなかろうか。まあ、倫理的な面での告発という点では納得する人はけっこういるかもしれない。とはいえ、マイケル・ムーアはもうこの手の映画を撮らないそうだ。誰もスタンドアップしてくれないからだという。なるほど。
 この映画から3年。マイケル・ムーアは今ごろ何をしているのだろう?(レンタルDVD)

CAPITALISM: A LOVE STORY
127分、アメリカ、2009
製作・監督・脚本: マイケル・ムーア、共同製作:アン・ムーア、製作総指揮: キャスリーン・グリンほか、音楽: ジェフ・ギブス
出演: マイケル・ムーア