吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

やがて来たる者へ

 第2次大戦下のイタリアで行われたドイツ軍の村民殺戮事件、1944年9月の「マルザボットの虐殺」を描く。主人公が8歳の子どもだからか、多くが子ども目線で作られた映画なので、ドイツ軍もパルチザンもどちらも単なる人殺しにしか見えなかったりする。戦争とはそもそもそういうものかも知れない。正義のための抵抗運動とはいえ、パルチザンとてドイツ兵を見れば残虐に殺してしまうのだ。子どもの心を傷つける、戦争。

 イタリアの農村風景が侘しく、人々は貧しく質素に、そして助け合って暮らす。そんな村はパルチザンの拠点であり、森にはパルチザンがアジトを作って立て篭もっている。1943年9月、既に連合軍に降伏していたイタリアにはドイツ軍がやってきて占領し、連合軍との戦いを続けると同時にパルチザンとの戦いが始まっていた。

 そんなときに起きた村民虐殺は、女・子ども・老人ばかりが殺された事件としていまだに語り継がれているという。

 映画はその虐殺にいたる経過を季節の移り変わりと共に淡々と描くわけだが、ただ起きたことを淡々と再現するだけでは感動も薄く、言い方は悪いが退屈してしまう。ナチスの非道を告発する映画は数多いのだから、今さら感があり、映画にするなら大いに工夫が必要だ。なぜこのようなことが起きたのかの説明もまったくなく、群像劇にしても人物の描き方が中途半端で村民の生活が生き生きと伝わってこない。もう少しドラマを立体的に紡ぐほうがよかったのではないか。

 とはいえ、戦争を知らない世代としてはぜひ見ておきたい作品であることは間違いない。

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L'UOMO CHE VERRA
117分、イタリア、2009
製作・監督・脚本:ジョルジョ・ディリッティ、製作:シモーネ・バキーニ、共同脚本:ジョヴァンニ・ガラヴォッティ、タニア・ペドローニ、音楽: マルコ・ビスカリーニ、ダニエレ・フルラーティ
出演:アルバ・ロルヴァケル、マヤ・サンサ、クラウディオ・カサディオ、グレタ・ズッケーリ・モンタナーリ、ステファノ・ビコッキ