「スーパー8」よりはよっぽどストレートにエイリアンものの作品。脚本の完成度が低いとかいう批評もあったけど、わたしはむしろその未完成な脚本がいいと思った。全然説明不足で、何がなにか訳わからん。でも、大いなる災厄の渦中にいる人間というのは、最も情報から疎外され、もっとも訳わからない状態におかれているものであろうから、そういう意味では実にリアルな作品である。
謎のエイリアンに地球が征服される3日間を描いているのだけれど、とにかくひたすら人間はやられるのみ。わずかに二日目に米軍が反撃してたけど、申し訳程度のちゃちなバズーカ砲みたいなのを宇宙船に向けて撃っていただけで、戦闘機も全部打ち落とされていたし、全然焼け石に水。
宇宙船そのものがエイリアンみたいなグロテスクなもので、さらにそこから巨大生物(?)が降りてきて町を破壊しまくり、人間を次々と吸い込むのである。征服者の狙いは人間を餌にすることのようだが、圧倒的な彼我の力の差ゆえ、人間に到底勝ち目はない。どうやって反撃するんだ、この絶望的な状況で。しかもそんな中でもロサンゼルスの高級アパートの住民たちはここからどうやって逃げるのかと罵りあいを始める。
いろいろとお約束の展開があり、ビジュアル的にはとても面白いシーンが次々披露され、最後はあっとおどろくラストシーンへ。もう口あんぐりで、思わず笑ってしまいました。
ネット上の評判はさんざんなようだけれど、わたしは充分楽しんだので、どうせなら大画面で見ることをお奨めします。あれをDVDで見たりするとかなり苦しい。
この映画、今の日本で見るからけっこうリアル感があるのでは。高級アパートに立てこもっている住民たちは、いま東北の被災地の人たちが経験しているようなことを経験する。水が止まってトイレの水を流せなくなったり、食料や水が尽きてきたり。情報が流れて来なくてなにがどうなっているのか分からないし、助けがくるのかどうかもわからない、という。こんな娯楽映画を見てお気楽にそんなことを思うのは被災していないからかもしれないが、わたしには結構怖い映画だった。水が出ないとか食料がなくなるとか、そういう恐怖を少しでも感じることができれば、被災した人たちの気持ちに近づくことができるかもしれない。近づけたからといって何がどうなるわけではないのだが…。
パニック映画というのは、恐怖の追体験やシミュレーションの役に立つという面がある。実際に怖い目に遭った人は恐怖が蘇るから見ないほうがいいだろうが、これから起きるであろう災厄に立ち向かう心構えを鍛えるにはいいのではないか。などと、こんな低予算映画の教育的効果について考えてみたり。
主役の エリック・バルフォー はアラビアン・ナイトの王子様みたいな風貌。池田理代子の漫画に出てくるアラブ人を思い出したわ。
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SKYLINE
94分、アメリカ、2010
監督: コリン・ストラウス、グレッグ・ストラウス、製作: クリスチャン・ジェームズ・アンドリーセン他、脚本: ジョシュア・コーズ、リアム・オドネル、音楽: マシュー・マージェソン
出演: エリック・バルフォー、スコッティー・トンプソン、ブリタニー・ダニエル、デヴィッド・ザヤス、ドナルド・フェイソン、クリスタル・リード