吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

SUPER 8/スーパーエイト

宇宙人襲来物としてはいかが、な出来だが、少年たちの映画製作のひと夏という物語としてみればとても楽しい。というか、そもそも宇宙ものと思うのが間違いで、そんなふうに予告編で見せていたのがミスリードなんだ。


 映画のストーリーは報道関係者にも秘密にされていたそうで、パンフレット製作時にストーリーがわからなかったらしい。だから、本作の劇場用パンフにはふつうパンフレットに掲載されているはずのストーリー欄がない。広報担当者はストーリーもわからずに予告編を作ったのだろうな。だから、宇宙人襲来、すわ宇宙戦争か、という映画だと観客は騙されるわけ。実際はそうではなくて、映画作りに情熱を燃やす少年たちの物語で、大いに監督の自伝的作品なのである。ついでにエイブラムス監督が少年時代に繰り返し見たというスピルバーグ監督作品へのオマージュに満ち満ちている。だから、「どこかで見たことあるよな」というシーンばかりが頻出するのだが、それがまた楽しい。


 物語の舞台は1979年の田舎町の夏休み。少年少女たちは夏休み学生映画コンテストに出品するための映画作りに余念がない。駅のシーンを撮ろうと夜中に駅舎に集まってロケをしていた少年たちの目の前で大惨事が起きる。映画の見せ場は前半にあって、列車が転覆する事故はすごい迫力だった。しかも単なる脱線事故であれほどまでに長時間列車がでんぐり返り続けるというのも、こってり観客サービスに徹していてよろしい。


 後になるほどエイリアンの怖さが消えていき、物語の吸引力は急速に落ちていくので、尻すぼみのまま終わってしまうのかとがっくりきそうだったが、エンドクレジットと共に流れた少年たちが撮った劇中劇(映画)が傑作だった。これがこの映画で一番面白かったというのも皮肉か。
 ちなみに「スーパー8」というのは1979年当時コダック社が発売していた8ミリカメラのことで、このタイトルを見ただけで懐かしさを感じる人は本物の映像好き。
 ダコタ・ファニングの妹、エル・ファニングがヒロイン役を演じていて、姉と同じく上手すぎるのが怖い。

SUPER 8
111分、アメリカ、2011
製作・監督・脚本: J・J・エイブラムス、製作: スティーヴン・スピルバーグ、ブライアン・バーク、音楽: マイケル・ジアッキノ
出演: ジョエル・コートニー、エル・ファニングカイル・チャンドラー、ライリー・グリフィス、ライアン・リー