吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

JUNO/ジュノ

 映画を見る前にあらすじのイントロダクションを読んでいると、70年代に名作と謳われた「フレンズ」を突然思い出した。主演女優のアニセー・アルヴィナは当時日本でものすごい人気があったはず。調べてみたらなんと、2004年に癌で亡くなっていた。わたしより4歳年上。雑誌「ロードショー」で毎号のようにグラビアページがあった人気女優だったのに、ほとんど「フレンズ」1作だけのような人だった。エルトン・ジョンの主題歌も流行したなぁ…。懐かしい。
 

 で、実際にDVDを見てみたら…。「フレンズ」とは全然違った。ジュノがめちゃくちゃ可愛い。十代の妊娠という重い話なのに演出は軽くて楽しい。ジュノが出産すると決めてからのノリが軽い。理想の養父母を見つけてルンルンしているように見えるのがとっても不思議。しかし、この経験は彼女にとってもやはり大きくてつらいものであった。理想のカップルが養子をもらうと決意してからなぜか亀裂が入ってしまう、という皮肉。しかも結末が予想を裏切る展開だったのでちょっと驚き。教訓めいたことを一切言わないところがこの映画のよさか。


 家族とは何だろう? 血縁ではない家族があっても良いじゃない。家族って、要するに無償の愛を捧げる人々の集まりなのだ。相手を愛している、そのことに理由なんてない。理由もなく愛しているから憎むときはとことん憎む。どうせ他人どうしの集まりなのだ。夫婦なんて究極の他人なんだから、これほど危ういものはない。他者が寄り集まり愛という名の牢獄を作ったり慈しみが安らぎを生んだり。不思議なものだ、家族って。わたしも若い頃はとことん憎んだ「家族」という制度と人々をなぜか愛していることに気づいたり、放っておけないと決意したり。おそらく、家族の誰かが弱者になったとき、「愛」が発動するのだろう。(レンタルDVD)

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JUNO
96分、アメリカ、2007
監督: ジェイソン・ライトマン
製作: リアンヌ・ハルフォンほか、脚本: ディアブロ・コディ、音楽: マテオ・メッシーナ
出演: エレン・ペイジマイケル・セラジェニファー・ガーナージェイソン・ベイトマン