ジュリエット・ビノシュ似の女優が、鼻が大きくてちょっとわたしの趣味ではなかったのが減点。男優はなかなかよかったけど、「鳥顔」と言われて、そういえば、とよくよく見れば確かに鳥顔。だから、美男美女を期待しないほうがいい。この作品は、なによりも、優れた脚本と同時に、カメラを堪能するもの。アップ多用のカメラが、人物の前面の焦点をぼかすためにとても幻想的で美しい光を放っていて、素敵だった。
男と女のからだがこすり合わせるように触れあう。腹と胸、胸と胸、足と足、尻と手、がからむ場面から始まる本作は、もちろんR-18。お子様と一緒のご鑑賞には要注意。
二人がベッドでからまり、情事が終わった後の満足感に浸りながら問わず語りで物語り始める、その内容は男と女の探り合い。絡まる言葉と言葉の陰に真実をつかもうと疑いながらも互いが惹かれていく。その様がとてもうまく捉えられていて、感心した。しゃべくり映画かと思ったけれど、意外に沈黙の時間があり、その沈黙がまた饒舌に二人の心理を語っていて絶妙。
未来が決まっている二人が、その未来へのかすかな動揺を見せたうたかたの瞬間なのか、それともあるべき未来がこのあと揺らいでいくのか。ラストシーンで眠りこける二人、行きずりの「恋」だから刹那に燃えた。人生はわからない。何が起きるかわからない。そんな暗示を込めたラストはけだるい余韻に満ちていた。
登場人物は二人だけ、ひたすらベッドの中しか写さない、全裸の二人だけで展開する異色の作品。劇場未公開の地味な地味な作品だけれど、けっこうお奨め。85分という短さもいい。(レンタルDVD)
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EN LA CAMA
85分、チリ/ドイツ、2005
監督: マティアス・ビセ、脚本: フリオ・ロハス、撮影: ガブリエル・ディアス、 クリスティアン・カストロ、音楽: ディエゴ・フォンテシージャ
出演: ブランカ・レウィン、ゴンサーロ・バレンスエロ