吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

クレイドル・ウィル・ロック

 第2次世界大戦勃発直前の時代状況が活写されていて、リズミカルでノリのいい社会派ミュージカル。なかなかの佳作。

 ロックフェラービルの壁画を巡るロックフェラー家のプリンスとディエゴ・リベラとの闘い、無口で不機嫌なフリーダ・カーロという場面では映画「フリーダ」と伝記『フリーダ・カーロ』を思い出した。思い出したが、それは断片的にであって、いったいどんな映画だったのか、どんな評伝だったのか、詳細は何も覚えていないことに愕然とした。映画を見終わってから自分のレビューを読み直して「なるほど、こういう作品だったか」と納得するとは情けない。やはりこういうときのためにも読書メモは取っておかないといけないなぁと反省した。


 革命と芸術をめぐる1930年代アメリカの状況を少しでも知っていないとこの映画の面白さは半減するだろう。「揺りかごは揺れる」という社会派ミュージカルが政府の弾圧にあって上演禁止となりながら、ゲリラ的に上演されたことは、実話に基づくという。映画を見ながら左翼演劇の歴史が頭をよぎる。そういえば、「レッズ」(1981年、ウオーレン・ベイティ監督)でも劇作家ユージン・オニールが大きな位置を占めていた。

 
 「揺りかごは揺れる」の作曲家が妄想に駆られる場面が大変面白い。ブレヒトが現れてあれこれと口を出す、というくだりには笑える。さらにもう一人現れる女性が誰なのかわからなかった。ミーシャの絵に登場するような服装をしていた。


 劇中劇の登場人物である労組員が力を込めて演説する場面など、典型的なプロレタリア演劇の香りがしてその内容じたいは面白くもなんともないのだが、ティム・ロビンスの演出がいいので、ノリがよく、感動的だ。(レンタルDVD)

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CRADLE WILL ROCK
134分、アメリカ、1999年
監督・脚本: ティム・ロビンス、製作: ジョン・キリク、音楽: デヴィッド・ロビンス
出演: エミリー・ワトソンハンク・アザリアスーザン・サランドンジョン・キューザックジョーン・キューザックビル・マーレイヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジョン・タートゥーロ