去年見た、この手の社会派サスペンスの中では一番面白かったかも。
さて、この映画、ベン・アフレックとラッセル・クロウが同級生という設定に無理がある。実際二人は年の差が8歳ぐらいあるはずだし、見た目だってベンとラッセルではかなり違う。いや、二人は同級生ではなくてルームメイトっていう設定だったかな。いずれにしても、親友だというのはなんか違和感がある。でもこの二人の見た目の違い、アンバランスが実はけっこう面白いのだ。
さすがにトニー・ギルロイが脚本に参加しているからなのか、ひねりは多いし、凝った台詞回しにはなかなか、うならせるものがある。それに、軍需産業の企業犯罪なんていう別に珍しくもないテーマでここまでうまく引っ張るというのもかなりの手管である。脚本もよし、演出もよし、演技もよし。
主役二人の間に女性を置き(ロビン・ライト・ペン)、彼らが三角関係であったことを最初から匂わせるという脚本もなかなか憎い。新聞記者ラッセル・クロウが若手女性記者を叩きながらも彼女を育てていく様も小気味よく、とにかく巻頭の肉弾アクションシーンから最後まで飽きさせない。
議員と記者の個人的つながりや利害、記者同士のライバル意識と仲間意識、報道と商業(商売)といった間(はざま)で経営側に付かざるをえないデスクの苦悩(しかし映画ではヘレン・ミレン演じるデスクは嫌な上司その1という感じ)、これはまさにリアリティのあるものだ。日本の新聞社も今は大きな経営危機に瀕しており、他人事とは思えないものがあるだろう。
社会記者・政治記者の取材の仕方など、内部事情暴露ものとして見てもかなり面白いし、最後までとにかく一気に突っ走る。ところが、最後の最後になってどんでん返しが待っているのだが、それがどうも辻褄があっているのか腑に落ちない。エンドクレジットを見ながら「なんか変だなぁ〜」と頭をひねったがよくわからない。まあ面白かったからよしとしよう。
パンフレットによると、本作はもともとブラッド・ピッドの企画だったらしい。ラッセル・クロウが演じた冴えない中年記者の役をブラピが演じるはずだったとか。それではかなりイメージが違う。ラッセル・クロウで正解でしょう。さらに、これはオリジナルがイギリスのテレビドラマであり、大人気を博したシリーズだそうな。それだけのことはあって、ストーリーはたいへん面白い。それに、細部に手の込んだ脚本は手練れの社会派が三人組んだだけのことはある。
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STATE OF PLAY
127分、アメリカ/イギリス、2009年
監督: ケヴィン・マクドナルド、製作: アンドリュー・ハウプトマンほか、製作総指揮: ポール・アボットほか、脚本: マシュー・マイケル・カーナハン、トニー・ギルロイ、ビリー・レイ、オリジナル脚本: ポール・アボット、音楽: アレックス・ヘッフェス
出演: ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、レイチェル・マクアダムス、ヘレン・ミレン、ジェイソン・ベイトマン、ロビン・ライト・ペン