吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

小説家を見つけたら

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 何をやらせてもできる天才児というのは確かにいるのだろう、驚異の記憶力と文才、バスケットボールの才能。どれか一つでもあれば世の中で成功するには充分なんだけれど、全部を持っている人間っていったい自分のことをどう見ているのだろう? もうわたしなんてうらやましくってしょうがなかったよ、実際。どれか一つでいいからわけて欲しい。

 さて物語は……ニューヨークはブロンクスという下町に住む黒人少年ジャマールが好奇心にかられて知り合うことになった老人は、たった一作だけを出版して隠遁してしまった天才小説家だった。反発しあいながらも、ジャマールの才能に気づいた作家ウィリアム・フォレスターは、彼の文章指導を始める。いつしか二人は固い友情の絆に結ばれていくが、ジャマールの才能に嫉妬する学校教師に陰湿な嫌がらせや妨害を受ける…

 「グッド・ウィル・ハンティング」によく似ているなあと思ったら、同じ監督だった。こっちの方が素直な作りになっている。その分、「グッドウィル・ハンティング」のほうが引き出しの多い重層的な作品だった。完成度は「グッド・…」に軍配が上がるだろう。ただ、物語のどこに共振するかは人それぞれなのでなんともいえないけれど、わたしはこっちの方が好き。
 典型的なサクセス・ストーリーなので胡散臭いと思う人もいるかもしれない。また、主人公ジャマールの内面の葛藤がほとんど科白に描かれていないので、物足りなくはある。ひょっとして天才の苦悩、とか内面の葛藤、なんて彼にはなかったのかもしれない。それほど幸せな天才児っていうことか。
 彼よりも引きこもり小説家ウィリアム・フォレスターの方がずっと魅力的なキャラクターだった。ショーン・コネリーはいくつになっても素敵だ。いつ見ても惚れる。この映画、大したメリハリがないので少々退屈かも知れないが、わたしはおもしろく見ることができた。文章を書くことに思い入れのある人にはお薦め。ウイットに富んだ名言がきら星のごとくちりばめられたなかなか味のある作品でした。(レンタルDVD)

Finding Forrester

製作年:2000
上映時間: 136分
製作国: アメリカ合衆国
監督: ガス・ヴァン・サント
製作: ショーン・コネリー
    ローレンス・マーク
    ロンダ・トレフソン
脚本: マイク・リッチ
音楽: マイルス・デイヴィス

出演: ショーン・コネリー、F・マーレイ・エイブラハム、アンナ・パキン、ロブ・ブラウン、バスタ・ライムスマイケル・ピット、マイケル・ヌーリー