海の上のピアニスト
音楽映画はわたしの大好きなジャンルの一つ。特にピアニストの伝記はお気に入りである。なんといってもピアノ曲をたくさん聴けるからね。
この映画も,ラストさえ別のものを用意してもらえれば、まったく満足するはずだったのに。
超絶技巧物語が突然,最後の最後に,引きこもり人間の悲惨な末路という結末に行き着くというのはまたしても納得できない終わり方。親友だったら殴ってでも船から降ろせと言いたくなるよ。なんで爆破しちゃうわけ?
音楽に殉じ,自らの閉ざされた世界に殉じるなんて全然かっこよくない。こういうのを「イル・ポスティーノ」を超える感動作と言ってほしくない。主人公を殺せばそれで感動作になるという安易な発想はやめてほしい。
ただ、この映画には、移民の切ないまでのUSAへの憧憬が挿話として描かれ、――いや、実はこれが大きなテーマだったのだろう――、異邦人ナインティーン・ハンドレッド(ティム・ロス)が流浪の民の象徴として位置づけられていた。驚異の才能と引き替えた孤独、有限の88鍵から生み出す無限の音楽世界に拘泥する自我への執着、といったものは、コミュニケーション疎外の現代を表象している。と、思うんだけど…思うんだけど、納得できない、またしてもこの作品も。
私は弱虫は嫌いだ。どんなに理屈をこねたって、あんたは弱虫だ。なんで船を降りない? 降りない理由のへ理屈をこねるな。ああ、いらいらする。もっと前向きの理由があって船を降りないなら許そう。でも死んだらお仕舞いだよ。もうピアノも弾けない。
音楽は実に素晴らしかった。モリコーネに敬意を表して、評価は星一つ分アップ。
The Legend of 1900
上映時間 : 125分
製作国 : イタリア=アメリカ
製作年 : 1999年
監督 : ジュゼッペ・トルナトーレ
製作 : フランチェスコ・トルナトーレ
ダン・ジンクス
脚本 : ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽 : エンニオ・モリコーネ
出演 : ティム・ロス
プルイット・テイラー・ヴィンス
メラニー・ティエリー
クラレンス・ウィリアムズⅢ世