吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ヒストリー・オブ・バイオレンス


 田舎町で小さなレストランを経営する平凡な男がある事件をきっかけに大きな暴力に巻き込まれていく。妻と二人の子どもに恵まれ、平凡に暮らしていたトム・ストールが、自分の食堂に押し入ってきた強盗2人を射殺したことから英雄扱いされ、テレビの取材攻勢を受けるようになる。やがて彼の周りには人相の悪い男達が徘徊するようになり、トムのことを「ジョーイ」と呼んで、さも昔からの知り合いのように振舞うのだが…

 巻頭、とても暑い南部の朝のモーテルが映る。「なんて暑さだ」とうんざりするように男二人がモーテルから出てきてチェックアウトするのだが、カメラはずっと長回しのまま、けだるい雰囲気を演出する。そのだらっとした朝の雰囲気のなかで、実は凄惨な殺人が行われていたことを観客はほどなくして知る。その2人組はやがて主人公トム・ストールの店に押し入ってトムに殺されてしまうのだ。禍々しい暴力から始まるこの映画は、全編に亘って銃による凄惨な殺人の場面が頻出する。

 平凡な男トムには家族にも隠していた過去があったのだ。強盗事件がきっかけになって彼の過去はやがて妻たちに知れることとなる。暴力を嫌い、暴力によっては何も解決しないと常日頃から息子に諭していたトムが、実は暴力にいろどられた過去をもつ男だったのだ。ヴィゴ・モーテンセンは精悍な顔つきがいかにも過去を秘めているような雰囲気で、役にぴったりだ。身体能力も高く、あっというまに大男たちをのしてしまう動きは見事。

 暴力から足を洗ったはずのトムなのに、身に降りかかる災難はやはり暴力を以ってしか振り払うことができないのか?

 暴力は暴力を呼び、その暴力を止揚するためには新たな暴力が必要となる。この国の暴力の連鎖はとどまるところを知らないのだろうか。暴力によって愛も失おうとする男の悲劇。後味が悪くて言葉を失う。(レンタルDVD)(R-15)

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A HISTORY OF VIOLENCE
アメリカ/カナダ、2005年、上映時間 96分
監督: デヴィッド・クローネンバーグ、製作: クリス・ベンダー、デヴィッド・クローネンバーグ、原作: ジョン・ワグナー、ヴィンス・ロック、脚本: ジョシュ・オルソン、音楽: ハワード・ショア
出演: ヴィゴ・モーテンセンマリア・ベロエド・ハリスウィリアム・ハート、アシュトン・ホームズ、ハイディ・ヘイズ