吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

幸せになるための27のドレス


 この映画のテーマは結婚ではなく結婚式。あくまでブライダルに焦点が当たっているため、スポンサーにブライダル産業がついているのだろう。日本の場合は少子化が進んでブライダル産業も構造不況業種ではなかろうかと思うが、実態はどうなのだろう。こういう映画を作る意図も、斜陽のブライダル産業活性化のためか?

 日本にはない習慣だが、アメリカの結婚式には「ブライズ・メイド」なる女性たちがいて、花嫁の付き添いをする。ということはこれまで何本か見た映画でも描かれていたからなんとなく知っていたけど、今回、そんなものがちゃんとしたシステムとしてあるのか、と驚いてしまった。結婚式のテーマにそって付添人の服装も指定されていて、花嫁を引き立てるべく周りでドレスを着る。ふーむ。結婚式全体がきちんとしたコンセプトの上に成り立ち、統一的形式で構築されているわけか。 

 ヒロインのジェーンは結婚式大好き人間で、とにかくやたらと他人の結婚式の世話を焼き、ウェディングドレスの仮縫いの代役を務めたり結婚式の招待客に配るプレゼントを手配したりリストを作ったり招待状を書いたり花嫁のトイレの世話までしたりと大忙し。自分の結婚はその気配もないのに、すでに彼女のクロゼットには27着の付添人用ドレスがぎゅぎゅう詰めになっている。28着目を着る前に自分の恋を成就させたいジェーンだが、彼女の憧れの男性たる職場の上司はジェーンを有能な秘書としか見ていない。そんなジェーンが、ブライダル記事専門のライター、ケビンと知り合う。ケビンが登場したところで、「お、こいつが本命になるのか?」と思わせておいて一筋縄ではいかない展開へとストーリーはねじれていく。ジェーンの妹テスが登場してジェーンの憧れの君ジョージと一目で恋に落ちたからさあたいへん。ジェーンの恋はこれにて一巻の終わりか?! 28着目のドレスは妹のために着るはめになるのか?!

 世話好きで人のいいジェーンは、決して”No”と言えない。わがままな妹テスに振り回されても黙って耐えている。だが、とうとう我慢できずに切れてしまったとき、ジェーンはどんな復讐にでるのだろう? この場面をみて溜飲が下がる思いのする観客がいたら相当根性が悪い。人を傷つければ自分も傷つく。我慢の限度を超えたときに見せる優しさこそが人の値打ちを決めるのではなかろうか。切れてしまったからこそ、そこで相手に対して言うべきことやするべきことは本当によく考えなければならないのだ。

 とはいえ、なかなかそんなふうに聖人君子になれないのが人間で、ただこの映画では、アメリカ的なドライさなのか、お互いへの憎しみがどろどろと渦巻くこともなくさっさと気持ちを切り替えてしまうところがあっけにとられる。これがベルイマン監督だったらもう大変な湿度の高い映画になるんだろうと思うが、そうではないあっさりさに見ているほうが脱力してしまう。「自分を殺して<いい人>になるのはよくない」というメッセージはアグレッシブなアメリカ的発想そのものだ。いかにもアメリカ映画、これが好きな人にはお気楽に見られるしそうでない人には27着のファッションショーが楽しいという以外にはそれほど見所はない。あ、ジェーンの憧れの上司役エドワード・バーンズってけっこういいかも。


<追記6.23>
 今夜、ヨガプラーナのレッスンを受けていてふと思い出したのだが、この映画でも主人公たちがヨガプラーナをしながら大声でおしゃべりするシーンがあった。ヨガプラーナをしながらおしゃべりできるなんてある意味すごいかも。わたしなんて全然余裕ないもんね。いつも息が上がってるし。

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幸せになるための27のドレス
27 DRESSES
アメリカ、2008年、上映時間 111分
監督:アン・フレッチャー、製作: ロジャー・バーンバウムほか、脚本: アライン・ブロッシュ・マッケンナ、衣装デザイン: キャサリン・マリー・トーマス、音楽: ランディ・エデルマン
出演: キャサリン・ハイグルジェームズ・マースデンマリン・アッカーマン
エドワード・バーンズ