吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

マリア・カラス 最後の恋


 カラスの伝記映画としては「永遠のマリア・カラス」に遙かに劣る。だいいち、これひょっとしてテレビ作品?? 画質が悪くてなんだか見ていられない。演出も実に凡庸で、テレビドラマを見ているみたいだ。「永遠のマリア・カラス」のような躍動感もメリハリもない。おまけにアメリカ人もギリシャ人イギリス人もみーんなイタリア語でしゃべるって、そんなけったいな! ハリウッド映画ではよく外国人にまで英語をしゃべらせることがあるけど、あれと同じ違和感がある。マリア・カラスの歌だけはさすがに素晴らしく、美しい響きでクリアなので、「うちにあるカラスの歌曲集よりずっと声にハリがあって音質もいいなぁ、デジタルリマスターかな」と思っていたのだが、劇場用パンフレットを見てびっくり、これはアンナリーザ・ラスパリョージという歌手が吹き替えていたのだった。


 原題が「カラスとオナシス」。あまりにも有名な超セレブ同士のW不倫物語。プリマドンナの全盛時代にあったマリア・カラスを海運王オナシスが自身の豪華ヨットクルーザーに招待したことから二人の恋は始まった。同じギリシャ出身で、同じく貧しい子ども時代を過ごし、ゼロから苦労して成功した二人は惹かれあい、熱烈な恋に落ちた。すったもんだのあげくにオナシスが離婚しても、「自由でいたい」と言い張ってマリアとは結婚しなかった。いつまでたっても「愛人」に過ぎないことに苛立ちを募らせるマリア・カラス。金がすべて、と豪語するオナシスにとってはマリア・カラスは勲章の一つに過ぎなかったのだろう。成金趣味のオナシスは商売のためならなんでも利用し、なんでも自分の勲章にする。ジャクリーン・ケネディに近づいたのも、そもそもはアメリカでの利権がほしくてジャクリーンの妹に近づいたのがきっかけだったのだ。

 二人の長い愛人関係はオナシスがジャクリーンとの婚約を発表することで終わった。だが、マリア・カラスは最後までオナシスを愛していたと言われている。

 

 キャリアの絶頂にあったマリア・カラスが、自分のキャリアを捨てても愛に生きたいと願ったその愛の深みをこの映画は描き足りない。歌と愛の狭間で葛藤するわけでもなく、歌に対する熱意や悩みを吐露するわけでもない、マリアの内面が伝わってこない。オナシスとの関係も嫉妬が渦巻くドロドロ劇だから見ていて爽快感に欠けるのがいけないのか、とにかくなんだかうんざりするばかりで緊張感にも欠ける。

 唯一よかったのは、主役のルイーザ・ラニエリが美しかったこと。彼女をずっと見ているだけで幸せな気分だったから、なんとか救いがありました。しかしこれ、わざわざ劇場で見るようなもんではありません。

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CALLAS E ONASSIS
イタリア、2005年、上映時間 117分
監督: ジョルジオ・カピターニ、脚本: マウラ・ヌッチェテッリ、ラウラ・イッポリッティ、レア・タフリ
出演: ルイーザ・ラニエリ、ジェラール・ダルモン、アウグスト・ズッキ、ロベルト・アルバレス