吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

きみが死んだあとで

巻頭、学生服姿の山崎博昭の写真パネルが大写しになる。羽田空港へと続く弁天橋の上でその大きなパネルを持っているのはこの映画の監督なのだが、そんな説明はない。雨の中を立ち尽くす学生服姿の監督は自分の上半身と山崎博昭の写真を重ねている。その写真…

グンダーマン 優しき裏切り者の歌

”東ドイツのボブ・ディラン”ともてはやされた労働者歌手ゲアハルト・グンダーマンが実はシュタージのスパイだった、という衝撃の告白を行った実話を描いた物語。と聞くと、「善き人のためのソナタ」(2006年)を想起させる。かの作品と異なりこちらは実話で…

ハイゼ家 百年

「全ての歴史は、個人に宿る」という惹句に納得の3時間38分である。祖父から始まり、父、本人、と続くハイゼ家100年間の歴史を、残された手紙、日記、写真からたどる。トーマス・ハイゼ監督自らがそれを淡々と読みあげていくだけの映画なのに、目が離せない…

レ・ミゼラブル

2020年4月に劇場鑑賞。2021年2月25日DVDで再見。 映画はサッカー・ワールドカップでのフランスの優勝を熱狂的に祝う人々がびっしりと街頭を埋める、圧巻のシャンゼリゼ通りから始まる。狂喜乱舞する人々の顔、顔、顔。アフリカ出身者や西アジアからの移民が…

ノマドランド

緊急事態宣言が出て映画館が休業する前に見た。劇場用パンフレットを作成していないとな。最近こういうことが増えた。「テスラ」みたいな地味な作品ならともかく、いちおう本作はアカデミー賞候補作ですぞ。残念きわまりない。で、やっぱり獲ったじゃないの…

クロール -凶暴領域-

ブレイク・ライブリーが超絶強い女を演じた「ロスト・バケーション」と基本構造が同じ映画。ブレイク・ライヴリーに比べてヒロインがかなり地味なのではあるが、鮫の襲撃とちがって鰐の襲撃というのもなかなかに恐ろしい。 フロリダ地方にハリケーンがやって…

男と女 人生最良の日々

50年の時を超える続編! なんというおしゃれな映画だろう。なんという心を揺さぶる物語だろう。愛し合った記憶、二度と戻らない時間、もはや死以外に未来はない二人に再び愛の灯を微かに、しかし間違いなくともしていくその邂逅はなんという幸福感に満ちてい…

ジョジョ・ラビット

ウサギも殺せない臆病な少年ジョジョは周囲の少年たちから「ジョジョ・ラビット」と囃されていた。そんな心優しいジョジョはヒトラーに心酔し、密かに総統を心の友として暮らす日々を送っていた。 父が出征し、美しい母と二人で暮らすジョジョにとってはヒト…

TENET テネット

去年の10月11日、3年ぶりに帰国した息子Y太郎と一緒に映画館で鑑賞。もちろんIMAXで見たけど、意外に画面の大きさを実感することがなかった。とはいえ、音響の迫力はお尻から響いてくる感じで体感できた。 物語はノーラン監督が大好きな、時間軸いじりたお…

5パーセントの奇跡 ~嘘から始まる素敵な人生~

95%の視力を失いながらもその事実を隠して五つ星ホテルの研修生になった若者の実話をもとに作られた。これが実話というのはただ驚くしかない。 スリランカ人の父とドイツ人の母の間に生まれたサリヤは15歳の頃に視力をほとんど失ってしまう。しかし彼はホ…

靴ひも

イスラエルはエルサレムを舞台とする、老いた父と発達障害のある息子とのユーモラスで切ない物語。 主人公ガディは38歳にして母親に急死された。母の葬儀でたどたどしく追悼の祈りを読み、泣き崩れるガディの姿が冒頭で印象的に描かれる。そして、30年前…