吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2014-01-01から1年間の記事一覧

ブルージャスミン

さすがアカデミー賞をとっただけはある、ケイト・ブランシェットの見事に不気味な演技。彼女の目が怖い、目が。しかもその目をぐっと寄って撮るカメラさん、すごいですね、よく耐えました、この怖い目に。 贅沢三昧の暮らしをしていたかつてのニューヨーク・…

あなたを抱きしめる日まで

1950年代のアイルランドのカトリック修道院では、未婚で子どもを生んだ若い母親たちを引き取り、奴隷のように労働奉仕をさせ、さらには彼女たちの子どもをアメリカの金持ちに売り飛ばすということを行っていた。この映画は、自分が生んだ子どもを養子に出さ…

愛について、ある土曜日の面会室

「黒いスーツを着た男」に出演したレダ・カテブつながりでこの映画をご紹介。 「全然面白くない。引き込まれるものがない」と散々文句を言いながらDVDを見ている長男Y太郎と同じ感想をもちつつ、しかし母子とも「でも、結末がどうなるのか知りたい」とずるず…

黒いスーツを着た男

アラン・ドロンの再来と騒がれているラファエル・ペルソナ目当てで見に行った本作、なかなかどうして優れた脚本の見ごたえある作品だった。 原題は「三つの世界」。三つの世界とは、主人公アランの住む経済界、事故の目撃者ジュリエットの住む学問界、被害者…

マンデラ 自由への長い道

マンデラの自伝に基づく物語だけに、本人の内面がわりあいよく描けているし、本人でなければ知りようのないことも描かれている。しかし逆に、誇張や韜晦もあるのではと思えるが、伝記的事実についてわたしはよく知らないため、この映画を素直に受け止めて素…

8月の家族たち

舞台劇のテンションをそのまま映画にされるとチトしんどいものがある。暑苦しい映画。俳優のテンションも、8月のオクラホマも。 熱い暑いある日、父の葬儀に集まった家族たちが繰り広げる「ホームドラマ」。家族の中にあるさまざまな秘密が一挙に噴出し収拾…

テルマエ・ロマエ II

なんだか評判の悪い第二作なんだけど、どうしてどうして、わたしは十分に楽しみましたよ。楽しみすぎて後半は爆睡するほどのリラックスぶり。やっぱり温泉映画は見てゆったり、楽しんでゆったり、途中で寝るのもよきかな、よきかな。 原作ファンとしては、映…

名探偵コナン 異次元の狙撃手

「ノア 約束の舟」の試写会まで微妙に時間が空いたので、時間つぶしに見た。名探偵コナンを見るのは久しぶり。10年ぶりかもっと? 連載開始20周年だというから、アニメ放送開始もその直後かと思われる。子どもたちが幼かったころは一緒に毎週見ていたテレビ…

疎開した40万冊の図書

東京に空襲が増す戦時下に、図書館の蔵書を40万冊も疎開させた事実はあまり知られていない。これは、文化を尊んだ人々が、懸命に努力して本を残していったその様子を証言でつづったドキュメンタリー。 3月3日にエルおおさかで開催した「上映する会」は大盛況…

チスル

描かれていることは残虐な暴力なのに、淡々とした描写。モノクロの深い陰影のある映像が美しい。 いまだに全貌が明らかにされていない、済州島の「4.3蜂起」を描く作品だが、この映画を見ても4.3事件についてまったくわからないので、それは予習してお…

クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん

クレヨンしんちゃんの映画を見るのは「嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」(2003年)以来だ。「オトナ帝国の逆襲以来の傑作」と前評判のよい本作だが、やっぱりわたしにとって最大の名作は「嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」(2002年)。それに次ぐのが「オトナ帝…

とらわれて夏

これはもう、メロドラマ一直線。ある日突然巻き起こった恋の風に吹かれてこのままどこまでも地の果てまでも、と思うことはあるだろう。その風はいつか吹き止むのか? 母のナイト(騎士)にならんとする少年がけなげで愛おしい。 離婚した母の元に残った少年…

ある過去の行方

「彼女が消えた浜辺」で戦慄したアスガー・ファルハディ監督、続いて「別離」でも完成度の高さにうならされた。こうなると次の「ある過去の行方」に対する期待度が高まりすぎて困る。ハードルが高いから、少々の作品では納得できなくなってしまったよ、この…

ウルフ・オブ・ウォールストリート

面白くないわけじゃないけど、長すぎる。途中ときどきうとうとしていた。 デカプリオの演技が血圧高い、なんていうレベルじゃなくて脳卒中を起こすんちゃうかというほど切れまくるので、観ていてしんどい。途中で猛烈に頭痛がしてきてたまらなかった。頭痛は…

ジャンゴ 繋がれざる者

2013年鑑賞作で未掲載の作品をあげていく。 これは長男Y太郎の大好きなタランティーノの作品、いかにものタンランティーノ節全開。Yと二人で見に行って大いに満足して自宅凱旋しました、という作品。 巻頭、西部の荒野の広大な風景をバックに「続荒野の用心…

それでも夜は明ける

マイケル・ファスベンダーが目当てで見た。彼は冷酷な奴隷主を演じているが、マイケルが演じると、冷酷な人間のそこはかとない寂しさや弱さがにじみ出る。 1841年から12年間、奴隷として虐待を受けた実在の自由黒人の物語。ニューヨーク州サラトガに住む黒人…

ネイチャー

「ディープ・ブルー」「アース」「ライフ」と続くこのシリーズは全部映画館で見ている。なので、今回も。で、今回は3Dだ。素晴しい~! この日2本目の試写なので疲れて途中でちょっと寝てしまったが、そんなことはいい。このシリーズはあまりにも気持ちよく…

裏切りのサーカス

時は東西冷戦下、イギリスのスパイ機関「サーカス」は、ソ連の二重スパイをあぶり出すべくさまざまな罠を仕掛けていた。「サーカス」はIM6のことだろう。ソ連諜報部も登場するが、いちおうすべて仮名になっている。組織の幹部は、内部に潜むソ連のスパイを見…

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

一年以上前に見た映画。映像は予想通り素晴らしかった。映像はいいけどお話は単なる空想ものとかいう評価もあったが、どうしてどうして、ストーリーにも大いに惹かれた。おそらく原作小説はもっと神と信仰について深い洞察をしているのであろうが、映画でそ…

ザ・コール 緊急通報指令室

わたしが去年見た中で一番怖かった映画。このスリルとサスペンスは一級品。 コールナンバー911は日本で言うところの110番。911のオペレーターを描いた初の映画だという。これを見てわかることは、911オペレーターは単なるオペレーターではない。ある意…

最愛の大地

ボスニアの内戦を描いた力作。ボスニアの俳優にわざわざ訛った英語をしゃべらせた是非はともかく、今この映画を撮ることがアンジーにとっては大事だったのだろう。社会的活動に熱心で、国連難民高等弁務官事務所の親善大使を長らく務めてきた彼女ならではの…

オール・イズ・ロスト 最後の手紙

ロバート・レッドフォードがすっかりおじいさんになっているのには驚いた。特に、手。手に老化が現れていて見るに忍びない。しかし、おじいさんはお爺さんなりに素敵な歳のとりかただ。かっこいい男はいくつになってもかっこいい。ふと自分の手を見たら、わ…

127時間

予告編も作品の一部であるということが実感できる作品。主人公が渓谷の岩に挟まって動けなくなるということは観客の誰もが知っている。そのシーンは予告編で何度も見たから、映画の巻頭から「いつ挟まるんだろう」とドキドキしてしまう。そして、最初から危…

レイルウェイ 運命の旅路

日英両国の元兵士の憎悪とトラウマ、そして和解へと至る物語。原作は主人公エリック・ローマクスが書いた手記で、同書は1995年にイギリスのノンフィクション賞を受賞している。 映画「戦場にかける橋」でおなじみのクワイ河(クワイ河は実在せず、映画の大ヒ…

11:14

劇場未公開作品紹介シリーズ第8弾。 あんまり期待していなかったけど、これはなかなかに面白いサスペンス。夜の11:14に起きた交通事故。その事故にまつわる人々が複雑に絡まり合い、一つの円環を作る。シチュエーションをよく考えたものだと感心する。 …

ワンチャンス

ジュルズを演じたアレクサンドラ・ローチはたれ目でぽっちゃり型の可愛い女優。決して美人とはいえないが、チャーミングだ。あ、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」でサッチャーの若いころを演じていたんだ。あの時よりだいぶ太っている。 これは、現…

アナと雪の女王

これはわたしの小学生のころのアニメ原体験を刺激する作品だ。そういう意味では個人的にはいたく感動した。氷が光り輝く美しさに魅せられ、4分間もあった予告編を二度三度と見てますますそそられていた。アニメの原点はやはりこの色の美しさと動きにある。色…

ウォルト・ディズニーの約束

メリー・ポピンズの原作小説を書いた英国人トラヴァース夫人と、その映画化を交渉するディズニーとの丁々発止の交渉を描く、バックステージもの。 「メリー・ポピンズは自分の家族の物語だ」と言うトラヴァース夫人の、作品への思い入れは一方(ひとかた)な…

マイ・ライフ、マイ・ファミリー

劇場未公開作紹介シリーズ第7弾は、先ごろ亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンに哀悼の意を捧げながら。 この映画は他人事と思えない人も多いのでは。何度も助成金申請に落選する高学歴ワーキングプアの実態も描かれ、日本の貧しき若きインテリ層には…

BOX 袴田事件 命とは

冤罪事件を告発する、大変生真面目に作られた映画。とうとう3月27日に再審請求が通った。これを機に、3年前にDVDで見た本作を紹介する。 死刑囚袴田巌さんは48年間の拘禁生活を解かれたが、すでに精神に失調をきたしているという。1968年にこの事件の一審…