吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2012-01-01から1年間の記事一覧

思秋期

(※以下は機関紙編集者クラブの『編集サービス』紙http://club2010.sakura.ne.jp/service.htmlに掲載したものが元記事) ラストに若干の疑問を感じるが、落ち着いた丁寧な作りかたには好感が持てる。物語はDVをテーマにしているだけに暗くて憂鬱だし、主人公…

トータル・リコール

先月の映画サービスデーに長男Y太郎と映画館をはしご。一本目のフィリップ・ガレル「灼熱の肌」よりずっと面白いじゃないですか。しかし、その日の2本目に観たので、途中で疲れて寝てしまい、最後のほうの反帝独立戦争を見ていない(悔)! ほんとは3本見る…

ライク・サムワン・イン・ラブ

キアロスタミ節全開の本作は今年ナンバーワンの映画かも。「別離」のアスガー・ファルハディといい、イランの監督恐るべし。完全なる日本映画をイラン人に撮られるとは! 日本よ、これがイラン式日本映画だ。グローバリズム万歳。 「トスカーナの贋作」と同…

さようなら、葉っぱさん

葉っぱ64さんこと栗山光司さんが亡くなって早や2週間近くになる(享年68歳)。10月1日に葉っぱさんの訃報を聞いてすぐにエル・ライブラリーのブログに追悼の言葉を書いた。http://d.hatena.ne.jp/l-library/20121001 ライブラリーのブログだからあえて淡々…

天地明察

マスコミ試写にて7月に鑑賞。 滝田監督は「おくりびと」のときとは違ってスピーディでユーモアに溢れた演出を見せる。その分、期待した落ち着きがない。「おくりびと」に感動した人にとっては期待外れではなかろうか。江戸時代の所作にしては不自然さが目立…

プロメテウス

この映画はビジュアル世界が素晴らしい。それだけでも満悦できる。人類の起源の謎に迫る、という触れ込みの予告を何度も見せられたが、要するに「エイリアン」の前日譚。よって、「エイリアン」を見ていないとまったく話にならない。世界観も登場人物の造形…

白いリボン

不思議に引き込まれていく、独特の暗さをもった作品。第一次世界大戦勃発直前のドイツの片田舎に起きる暴力の連鎖。モノクロの画面が陰鬱に展開する。 うちのY太郎(21歳)が「ハネケの作品では一番いい」と評価していたように、実際、これまでのハネケの作…

苦役列車

主人公のダメダメ人間ぶりは原作よりは少しマシかもしれないが、いずれにしてもおよそ側にいてほしくない類のそれである。 原作は主人公の性格の悪さに辟易しつつもその明治文学みたいな文体に惹かれて読み進められるが、映画ではそのままなら露悪的なだけで…

少年と自転車

さすがはダルデンヌ兄弟だ。カメラの動きが職人芸の域に達している。巻頭暫くは手持ちのカメラの画面が揺れて見にくいと感じたものの、少年の寂しさやいじけた心に寄り添う画にあっという間に引き込まれていく。 主人公の少年シリルは父親に捨てられ、施設に…

ギリギリの女たち

「クレイジーホース・パリ」に続けてみたので爆睡必至かと危惧したが、演劇的な空間がそれなりに緊張感を保っているため、最後まで眠らずに見た。 登場人物は三姉妹のみ。ほぼワンシーン・ワンカットで固定カメラの長回し、という舞台劇のようなお話だ。台詞…

クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち

先月末に見た作品。映画よりも観客の反応のほうが面白かった。いつもなら一人で見に来る地味なインテリぽい人種が幅をきかすミニシアターの最前列に、なぜか「業界人」と思しき団体客が。彼らはいちいち映画の場面に反応して笑ったり拍手を送ったりするので…

ダークナイト ライジング

ノーラン監督のバットマン三部作、最終話の前に前2作を復習しておけばよかったと深く反省。これ、前作を覚えていないとなんもわかりませんよ〜! 100点満点だった前作に比べると、こちらはすべての点において見劣りする。その思想もキャラクターも映像も、な…

毎日新聞大阪本社訪問記

一ヶ月ほど前のことだが、たまたま毎日新聞大阪本社を訪問する機会を得た。わたしにとって大毎といえば大毎地下劇場。もう40年近くも前によく通った懐かしい場所だ。あの頃は大毎が今の堂島アバンザに位置しており、その頃既に古い建物だったように思う。こ…

渇き

いかにも、パク・チャヌク。この人の作品は絶対に好きにならない、なれない。けれど、異様な力がある。そもそも、カトリックの神父がバンパイヤになってしまって、若く美しい人妻と禁断の恋に落ちるなんていう奇想天外なストーリーを考えつく時点でやっぱり…

きみに読む物語

ライアン・ゴズリング・シリーズ、最後はこれ。 こんなベタな話、とか思いながら最後は落涙。ライアン・ゴズリングがブレイクした作品として有名なのだが、今頃やっとDVDで鑑賞。なるほどブレイクも納得のいい男ぶり。 認知症とおぼしき老婦人のもとに毎日の…