「旅の日々」ではなく、「旅と日々」なのである。
ストーリーはあるようでないようで、無いようである。ん? というような作品。全体として2部に分かれていると考えた方がよさそう。前半と後半で物語が完全に途切れている。
韓国人の女性脚本家がスランプに陥って、当てのない旅に出るという話なのだが、脚本家の李を演じたシム・ウギョンの鉛筆の持ち方が変なのはそういう演出なのか、シム・ウギョンの素の癖なのか? そんな些末なことが気になって気になって。
映画のスローテンポなオフビートぶりにわたしはすっかり眠気を催して、前半はほぼ爆睡していたような気がする。しかし後半になって突然目が覚めて、トンネルを抜けるとそこは雪国だったという景色が広がる場面以降はその美しさに目を奪われた。と共に、訳の分からない藁ぶき屋根の「旅館」に泊まろうとする李の行動を冷や冷やしながら見ていた。そんな怪しい宿に泊まっていいのか?と。
宿主が誰なのか画面が暗すぎてよく見えなかったのだが、声を聴いているとどうやら堤真一らしいとわかったが、完璧な東北弁に驚いた。
終わってみれば、「あれ?もう終わり?」と残念になる映画。もっとずっと見ていたかったと思わせる不思議な魅力がある。画面サイズがスタンダードととても狭苦しいのだが、その狭さがだんだん気にならなくなり、いつしか画面に釘付けになっている自分を発見する。そしてラストへ。いやもう、ラストも何もないでしょ。突然終わりました。こうして旅は終わるのか続くのかどうなるのか。
人生の日々ってこういうものなのかもしれない、と達観させるような映画でもあった。ゆったりした雰囲気が独特なのでこういうのが好きな人はたまらなく好きだろうけれど、ダメなひとは「何を言いたい映画なんだ?」と怒り出すかも。
2025
日本 Color 89分
監督:三宅唱
製作:崔相基ほか
原作:つげ義春『海辺の叙景』『ほんやら洞のべんさん』
脚本:三宅唱
撮影:月永雄太
音楽:Hi’Spec
出演:シム・ウンギョン、河合優実、高田万作、佐野史郎、堤真一






