吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

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 この映画を見れば不思議なことにマクドナルドのハンバーガーを食べたくなる。あんなに不味いのに!
 マクドナルド帝国はどのようにできあがったのかを赤裸々に描く伝記映画。ファウンダー(創業者)はレイ・クロックだが、彼は片田舎のマクドナルド兄弟が始めたハンバーガー店のフランチャイズ化を進めて事実上の創業者兄弟の考えを裏切った人間だ。本当の創業者である兄弟からすれば庇を貸して母屋を取られたという思いではないか。
 物語の発端は1954年、52歳の営業マンレイ・クロックはシェイクミキサーを自動車に積んで全国を売りまわっていたが、売り上げはよろしくない。そんなときに一度に8台の注文が入って驚いたレイは、遠くその店まで車を駆る。そこは中年のマクドナルド兄弟が生み出した驚異のハンバーガー提供システムが駆動する大人気ショップだった。天才的な経営手法に目を付けたレイは渋る兄弟を口説き落としてフランチャンズ契約を結ぶ。
 ここまで、画面は野心でギラギラするレイの顔をアップで写しまくり、「いやな感じ」と思わせる。実際、映画の最後までレイは嫌な男だ。儲かればいいのだと言わんばかりに、ほぼ詐欺状態で職人気質のマクドナルド兄弟を足蹴にする。現代的キッチンシステムで合理性を追求するレイは確かに経営者としての手腕が高かったのだろう。しかしその強引なやり方は観客が眉を顰めるに十分だ。マクドナルドのフランチャイズ化は一朝一夕にはできないし、銀行に融資を断られて危機に陥ったり、さまざまな紆余曲折がある。もちろんレイ・クロック本人の努力は並大抵ではないし、50代半ばでよくそれだけ精力的に働けたものだと感心するのではあるが。Wikipediaで調べてわかったのだが、レイ・クロックはユダヤ人であった。なるほど、やはりユダヤ人は頭がいい。そして彼がロータリークラブ(?)で疎外感を感じたことがまた彼の商売魂に火をつけたのではなかろうか。(Amazonプライムビデオ)
2016
THE FOUNDER
アメリカ   115分 
監督:ジョン・リー・ハンコック
脚本:
ロバート・シーゲル
音楽:
カーター・バーウェル
出演:
マイケル・キートンニック・オファーマン、ジョン・キャロル・リンチリンダ・カーデリーニ、パトリック・ウィルソンB・J・ノヴァク、ローラ・ダーン