思春期のこじらせ方はひとそれぞれだが、実は案外みんなよく似ているような気がする。基本的には承認欲求が昂じているのであり、劣等感にさいいなまれて自己否定する自分からいかに抜け出すかにかかっている。かくいうわたしも外見コンプレックスがひどくて、自分ほど不細工な女の子はいないと固く信じていた。いろんな面で自己評価が低くて生きているのが嫌になるほどだったのだ。今から考えたら嘘のようだが、当時は痩せすぎて肌もかさかさで脂っ気のない少女だった。今の腹脂を50年前のわたしにわけてあげたいよ!
さて、本作の主人公ケイラは「学年で一番無口な子」に選ばれてしまうほどの引っ込み思案な少女。エイス・グレードはつまり8年生ということで、日本でいえば中学校の最終学年にあたる。一念発起したケイラはなんとか自己アピールをせんとや、スマホの前で化粧してにっこり微笑み、「はーい、わたしケイラよ!」とアナウンスをいれてYoutubeにアップしてみるが、アクセス数はまったく伸びない。
ケイラの家庭は父一人娘一人で、この父が思春期の娘に手を焼いて距離の取り方をあれこれと試してみてはうまくいかない様子にがっくりしているのが微笑ましくも悲惨。優しいお父さんなんだけど、ちょっと構いすぎ? ケイラはとってもかわいい女の子だが、顔はニキビだらけで、身体はぽっちゃり体形で、要するにあんまりシュっとしていないのだ。シュっとしている同級生にあこがれの目を向けているがシカトされている様子がまた痛い。
そういう、いろいろと痛い様子が微笑ましくもリアルに描かれていて、作者(監督)と主人公の年齢の近さを感じさせる。
ラストシーンは、18歳の自分に向けて8年生のケイラがビデオメッセージを残す場面で終わる。その録画したメモリなどを入れた小箱を父親と一緒に庭に埋める。なかなか感動的な場面だ。
本作はこの年頃の子どもがいる親が子どもと一緒に見たら感動するのではなかろうか。一緒に見てくれるかどうかがまずハードル高いかな。わたしは息子たちと一緒に映画を見てきた。特にY太郎(現在28歳)とは彼が3歳の時からずっと一緒に映画生活をしてきたような気がする。そういう点ではわたしはとても幸せだ。学校生活では手を焼いた息子だが、日本とフランスに分かれたいまでも彼とは映画の感想を共有しあえているのが嬉しい。
閑話休題。本作は音楽が絶妙に良い。過剰なまでに場面を盛り上げる音楽の付け方が面白くて、独特のコミカルな雰囲気を醸し出す。ネット時代特有の自意識の表出が面白いと同時に、時代通観性を感じさせるところに世代を超えた共感が存する。お薦め。
2018
EIGHTH GRADE93分
アメリカ
監督:ボー・バーナム脚本:ボー・バーナム撮影:アンドリュー・ウィード音楽:アナ・メレディス