吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ウディ・アレンの6つの危ない物語

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ウディ・アレンのテレビドラマは初めて見た。6話シリーズなのだが、二日がかりとはいえ、一気に見てしまった。最近では一番面白かったアレン作品。
 時代は1970年、政治の季節のアメリカでは、ベトナム反戦運動が盛り上がっている。ウディ・アレンが演じる作家は典型的な中産階級、保守的なプチブルインテリである。そしてその妻は夫婦問題専門カウンセラーで、二人はニューヨーク郊外の瀟洒な家に優雅に暮らしている。そこにある日突然闖入してきたのは、妻の遠縁にあたる若い娘、彼女は左翼過激派で、看守を射殺(?)して脱獄してきたお尋ね者である。その夜から彼の生活は一変してしまう。平和なプチブル生活を堪能していたというのに。。。。
 ここから後は左翼自虐ネタばかりの展開で、可笑しくってしょうがない。こんな話で笑うのはニューヨーク・インテレクチャルズだけだろうと思うが、ユダヤ系インテリの悲しい性(さが)が垣間見えて面白い。ウディ・アレンも年を取ったとはいえ、口ごもりながらもマシンガントークが冴えている。
 面白いことに、現在の年齢のウディ・アレンが1970年の老インテリを演じるわけだから、モデルは彼の父の世代のはず。その世代のユダヤ人の生活がどうだったのか、セリフの中でかすかに出てくる主人公の幼いころの貧民生活が今の(つまり1970年の)彼の思想の基盤となっていることがわかる。
 そして若き革命家(マイリー・サイラス)の傲慢ぶりといいプチブルぶりといい、嫌悪感しか抱かせない彼女のこ憎たらしい演技が素晴らしい。
 この作品はシーズン1しか見ていなくて、続きがあるようだが、それが配信されていないのが残念。久しぶりにウディ・アレン主演のドタバタコメディで笑わせてもらいました。要するに自虐ネタは面白い、ということで。(Amazonプライムビデオ) 
(2016)
CRISIS IN SIX SCENES
2017/03/24~
放映局:Amazonプライム・ビデオ

監督:ウディ・アレン
製作:ヘレン・ロビン
エレイン・メイ
レイチェル・ブロズナハン
ジョン・マガロ