シンプル・フェイバー、つまり「ささやかな頼み事」。この映画ではそれが「ちょっと、うちの子のお迎えを頼める?」というもの。しかしそれがきっかけでとんでもない事件へと発展する。
巻頭、大音量でフレンチポップスがかかる。懐かしい”ÇA S'EST ARRANGE”! すでにノリノリ。 この映画全体でいったい何曲かかったのかというぐらい、フレンチポップス祭りである。ポール・フェイグ監督の趣味だそうな。そして、主人公ステファニーの親友である超絶かっこいいエミリー(ブレイク・ライヴリー)が住んでいるバブリーな家がまたおしゃれでたまりません。とにかくおしゃれな映画なので、その点は眼福、耳福。
女同士で憧れたり惹かれあったりするのって、すごくよくわかる。何しろブレイク・ライヴリーですからね、どう見たってかっこいい。そのかっこいい彼女がさらに素敵なパンツスーツですらりとした長身を目立たせながら登場するんですよ、ピンヒール履いて! すごいわ、すごい。こんなかっこいいキャリアウーマンのママを見たら、その瞬間に恋するよね、絶対にあこがれると思う。だから、主人公のシングルマザー、ステファニーが何か勘違いしてすっかり親友気取りになる気持ちもわかる。たった数週間のつきあいで「彼女はわたしの親友なの」と公言する馬鹿さ加減もあきれるが、それ以上に、「わたしの親友が行方不明なの」と涙声で語る動画をアップして毎日のようにブログを更新する自意識過剰ぶりにも驚く。こうして彼女は「親友」の行方不明を意識的にか無意識的にか利用して、ブログのフォロワーを増やすのである。
物語は当初、エミリーが行方不明になったというミステリーとして展開する。やがて彼女は死体で発見され、彼女の夫のこれまた超絶かっこいいアジア系のショーンが悲嘆にくれる。これほどの美男美女のカップルってそうそうは見当たりませんよ。しかしそこから物語は二転三転していく。
途中からはちょっとホラーの味付けがなされて、ぎょっとさせられるのだが、恐ろしさに震えあがりそうになったら途端にはしごを外すような演出でかわされてしまう。気が付いたらコメディになっていて、最後は笑ってしまったという、よくわからないお話。演出のぶれが激しすぎて、わざとやっているのか単に下手なだけなのかよくわからない。でもとにかく面白かったことは確かであり、ステファニーのセリフで言及されるフランス映画「悪魔のような女」みたいな展開を見せる。てっきり「悪魔のような女」のリメイクかと思いきや。。。
結局恐ろしいのは女、ということかな。男がばかなだけかもしれない。
まあ、金持ちにあこがれるとか美女にあこがれるという凡人を笑う映画かもしれない。
シンプルフェイバー(2018)
A SIMPLE FAVOR