吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

大空港2013

f:id:ginyu:20190429184308p:plain

「short cut」に続いて三谷幸喜のワンカットテレビドラマを見てみた。これまた面白い。しかし、ワンカットものならやっぱり「short cut」のほうが会話の妙味が冴えていた分、面白みは上だと思う。この大空港は舞台が広がり、登場人物も何倍にも増えた分、ちょっと群像劇の散漫さが出てしまったように思う。思うが、それでも面白くて笑いながら見ていた。
 舞台は松本空港。なんにもない空港で、地上勤務員の竹内結子も暇でしょうがない。そこへ羽田空港周辺の悪天候のために羽田に降りられなかった乗客たちがやってくる。乗客対応を命じられた竹内結子と、いろいろ訳ありな田野倉一家6人とのドタバタコメディ。シチュエーションコメディなのでテーマに深みもなければドラマ性もないのだが、それでもじゅうぶん面白い。
 役者が豪華なのに驚いてしまう。みんなうまいわ、特に田野倉の妻・神野美鈴の脱力系の色っぽい演技は絶品。また、ワンカット故の条件の厳しさが垣間見えてそこがまた笑いのツボ。役者が少々セリフを噛んでもそのままカメラは止めないし、おそらくアドリブに違いない、香川照之生瀬勝久のからみなんか面白過ぎて腹を抱える。香川照之が笑いをこらえながら怒る演技をしている様子がこちらにも見えてしまうので、一層可笑しい。舞台劇を見るような臨場感がある。ワンカットでカメラが動くために、時々光が入って画面が見苦しくなるのも愛嬌か。
 それより驚いたのは、オダギリジョーの七変化である。よくこの短い時間に着替えたもんだわ。
 というわけで、法事帰りの一家には浮気やらよろめきやらバツ3男との結婚話やらカミングアウトやら詐欺やら、いろいろあるのであって、最後はめでたく(もなく)松本空港を離陸する。松本空港(愛称は信州まつもと空港)自体が馬鹿にされているところも愛嬌か。よくロケさせたわ(笑)。田野倉一家が食べていた「とんかつラーメン」て、ほんとにメニューにあるんだ、これまた二度びっくり。(Amazonプライムビデオ) 
(2013)
 TV映画
監督・脚本:三谷幸喜撮影:山本英夫音楽:荻野清子