吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

30年後の同窓会

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 ベトナム戦争の戦友3人が30年後の2003年に再会する。そのきっかけは、かつての三人組の一人ドクが「2日前にイラク戦争で戦死した息子の遺体を引き取ってポーツマスまで連れて帰る。一緒に来ないか」とサルを誘ったことだ。サルが経営する酒場にいきなり現れたドクがサルを誘い、さらに今では牧師になっているミューラーを誘って700マイルの旅に出る、というロードムービーである。
 今では五十代になった男三人の旅は、下ネタも含めた爆笑会話が続いて楽しい。ドクは1年前に妻を亡くし、今また一人息子まで亡くしてしまった。悲しみに沈むドクですら笑い転げてしまうほどの楽しい旅。最初はいやがっていたミューラーも心が解けて、昔の調子を取り戻した三人は中学生がはしゃいでいるようなはじけっぷりを見せる。
 とはいえそこは哀愁漂う中年男たち。それぞれの年齢なりのしんどさや悩みもあり、何よりもドクは息子に死なれた悲しい父である。彼らの旅は戦争への批判、権力への不満、信仰への批判が噴出しつつ戻りつつ行きかっていく。
 出色はサルを演じたブライアン・クランストン。ほとんどアドリブではないかと思えるほどのギャグの連発に爆笑してしまった。本当に酔っぱらっているのではないかと思えるほどの自然な演技だ。3人の役者の演技がそれぞれに秀逸で、見事にアンサンブルを見せている。
 リチャード・リンクレーターがまた一つ、しゃべくり倒す映画の佳作を作ってくれた。最後はしみじみとさせる、枯れたタッチの演出。画面の色が黄色がかってどこかレトロな雰囲気を醸し出している。(Amazonプライムビデオ) 
2017
LAST FLAG FLYING
125分、アメリ
監督:リチャード・リンクレイター
製作:ジンジャー・スレッジほか、原作ダリル・ポニックサン脚本:リチャード・リンクレイターダリル・ポニックサン音楽:グレアム・レイノルズ