一つ空けて隣の席の若いおにいさんは巻頭のゾンビ映画の最中からずっと笑っていた。なんで笑うのかちょっとわからなかったわたし(マジこのゾンビ映画を怖いと思っていた)だが、後半第2部でわたしも思わず声を出して笑ってしまったので、きっとこのおにいさんは二回目か三回目かリピーターなんだろう、と勝手に想像。
というわけで、この映画は第一部がゾンビ映画で、第二部がそのメイキング映画。全編通して全部がメイキング映画なので、メタ映画のメタ映画と言える。こういうややこしい構造を持つとはいえ、お話は単純でしかも爆笑に継ぐ爆笑だから、終わってみたら「笑えたわー、面白かった」で終わるシチュエーションコメディである。後に何も残らない。とはいえ、映画愛はビンビン伝わるので、その点は映画ファンの琴線に触れるものがあり、一度は見ておくべき映画と思う。
特に、監督の妻役のキャラクターそのものの面白さもあり、演じた役者の上手さもあって、これは瞠目すべき点かと。「ぽん!」てなによ(爆笑)。わたしはギャグマンガ「できんぼーい」を思い出して笑っておりました。
遅ればせながらストーリーを書くと……いや、やめておこう。ネタバレは禁止じゃ!
撮影カメラに血しぶきが飛ぶというワンカット映画ではどうしようもないアクシデントについては、ネット批評で誰かが書いていたように、わたしも「トゥモロー・ワールド」を思い出していた。やっぱりホラー映画ってこういう点が怖いです、血しぶき,血糊! 思い切り血が飛びます、ぎゃんぎゃんびゅんびゅん。それが第2部になると血しぶき飛ばす担当スタッフが登場するのでこれまた笑いのネタ。最後には本物のスタッフなのか役者なのか観客にもよくわからなくなる、という混然一体のメイキングぶりには感動しました。
ところで、著作権法違反、という「パクリ」「盗作」の件について。アイデアや映画の構造・構成は著作物とはみなされないから、盗作と言い張るのは無理じゃないでしょうか。原案になった舞台劇と映画がどこまで酷似しているか、ほんとに裁判になったらワンシーンごとに見比べるしかないという楽しい作業を強いられる裁判官が羨ましい。
96分、日本、2018
監督・脚本:上田慎一郎、プロデューサー:市橋浩治、撮影:曽根剛、音楽:永井カイル
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山崎俊太郎