吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

マンマ・ミーア! ヒア・ウィ・ゴー

 エンドクレジットの後に爆笑の1カットがあるのでお見逃しなく。

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  かつて世界中を熱狂させたアバ(ABBA)の楽曲だけを使ってミュージカルを作り上げるという神業の物語を八年前に見たときには、心底驚いたと同時に中高年の生き直し賛歌を楽しんだものだったが、これがスケールアップして帰ってくるとは予想もしなかった。
 しかも今度は、前作のエンディング二〇年前の《過去》と、その後の《現在》を見せるという二重語りで物語に膨らみを与えた。過去と現在とのつながりもスムーズで、編集の妙が冴える。
 主人公はギリシャの小さな島でホテルを経営する若き女性、ソフィ。前作ではソフィの結婚式の前日と当日を描いていたが、本作ではソフィが改築したホテルの改装祝賀パーティの前日と当日が描かれる。ソフィの母であり前作の主人公だったドナは亡くなったという設定。母子家庭で育ってきたソフィには父親候補が三人いて、今回もまた勢揃いする。実父が誰かはDNA検査ですぐわかるはずだが、そんな野暮なことはしないのだ。ソフィには優しくてかっこいい父親が三人もついている。
 そして、母ドナの若き日が描かれ、ソフィの三人の「父親」とドナがどのように出会いソフィが生まれることになったのかを語る。若きドナを演じたリリー・ジェームズが愛らしくはじけていて、役柄にぴったり。登場するなりいきなり歌って踊り出すというサプライズもお見事。
 前作と同じ曲も流れるし、新たに選曲されたものもあり、どんなシチュエーションでどの曲がかかるかを予想するのも楽しみだ。同じ曲であっても全然違う演出で使われると、新たな意味が付加されていく。アバしばりという制限の中でこの驚くべきストーリー展開をよくぞ考え付いたものだ。
 前作でははしゃぎ回っていたのは中年の男女だったが、今度はぐっと若返って青春物語になっているので、幅広い観客層を狙えるだろう。個人的には、群舞で魅せる「ダンシングクイーン」の場面が超お薦め。試写会場で思わず踊り出しそうになった。そしてなんといっても圧巻は最後に登場するシェール。設定に無理やり感が満ちているが、大向こうのツッコミを跳ね飛ばす大迫力の歌唱にうっとりできる。
 歌、衣装、エーゲ海の風景、と映画的な見どころはたっぷりあり。そして、自立した女の苦闘を支えるのはやっぱり女。「使い捨て」にされる男たちには気の毒かもしれないが、その男たちが皆、ドナとソフィを愛しているというのがたまらなくいい話だ。
 ぜひとも前作を復習、いや予習されることをお勧めしたい。

MAMMA MIA! HERE WE GO AGAIN
114分、アメリカ、2018
監督・脚本:オル・パーカー、原案:リチャード・カーティスオル・パーカー、キャサリン・ジョンソン、撮影:ロバート・イェーマン、音楽:アン・ダッドリー、楽曲:ABBA
出演:アマンダ・セイフライドピアース・ブロスナンコリン・ファースステラン・スカルスガルドクリスティーン・バランスキージュリー・ウォルターズドミニク・クーパーリリー・ジェームズアンディ・ガルシア、シェール、メリル・ストリープ