吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

さよなら、人類

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 「散歩する惑星」「愛おしき隣人」に続く三部作の最終作。さすがに同じような話も三回目になると飽きる。ただし、相変わらずの画面作りへのこだわりには感動した。窓に執着する監督は、ほぼ全画面で窓を構図の中心に配置してその窓を通して不思議な人間模様を見せる。窓が映っていないときは奥行きのある構図を見せてどこか永遠な感じを演出する。
 この監督の画面は目を凝らしていないと隅のほうで何が起こっているか見過ごしてしまうから、一生懸命集中してしまうので、こんなに退屈な話なのに全然眠くならない! どれだけ退屈かというと、セリフの間合いがのんべんだらりと空いていて、全然面白くない「面白グッズ」を売る中年営業マン二人組が延々とくだらない商品の説明を繰り返し、フラメンコの女性教師は若い教え子にセクハラし、船長は船酔いに耐えられずに理髪師になるが、客に逃げられる。そういった場面の一切合切が悲しみに満ちた可笑しさを湛えているけれど、全然笑えない。 
 あまりにもオフビートが過ぎて何が言いたいのかさっぱりわからないし、18世紀の騎馬隊が突然カフェに現れる場面なんかもうコメディとか不条理とか通り越しているし、ロイ・アンダーソンなんだから、と最初から覚悟している観客すら唖然とさせる。

 
 三部作は全部順番に見ておかないとこの作品のオチも理解できない(いや、見ていても理解できない)から、どうせなら全部見ることをお勧め。しかし苦行ですなー。「愛おしき隣人」が一番面白かったかな。(U-NEXT)

EN DUVA SATT PA EN GREN OCH FUNDERADE PA TILLVARON
100分、スウェーデンノルウェー/フランス/ドイツ、2014
監督・脚本:ロイ・アンダーソン、製作:ペルニッラ・サンドストレム
出演:ニルス・ヴェストブロム、ホルゲル・アンデション