吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

パリで一緒に

f:id:ginyu:20190102010431p:plain

 脚本も演出もあほらしくて見ていられない。本当にこんな映画、よく作ったとあきれる。しかし最後までちゃんと見てしまったわたくし。それもこれも何といってもオードリー・ヘプバーンの魅力に尽きる。こんな女優、なかなかいませんよ。画面のほとんどを彼女の魅力で占めているなんて、その名前だけで大ヒット確実だなんて。スクリーンの大画面で彼女の愛らしい顔と姿を見ているだけで幸せになれるというのはこの時代の人々にとっては大変な行幸であったと思う。翻って今の時代のわたくしはパソコンの画面で配信動画を見ているわけで、これはこれでまあお手軽な幸せ感を味わえる。

 ストーリーはばかばかしいようなドタバタコメディだけれど、これが脚本家を主人公にして映画の自己言及作というところが映画ファンを喜ばせる。こういう映画はずるいね、映画ファンは見てしまうもんね。脚本を書けない脚本家が主人公、ウィリアム・ホールデンでございます。彼はこの当時、オードリーのことが好きで好きでたまらなかったらしいけど、既に人妻だったオードリーに言い寄ってもだめだったのだ。しかし「麗しのサブリナ」に続いて本作で共演できてよかったね。
 さて、本作のあらすじは、脚本家が口述する原稿をタイプする美しきタイピストと、彼らが紡ぐ劇中劇の二重の物語が進展するというもの。劇中劇は大泥棒の捕り物で、現実の脚本家とタイピストの恋愛と並行していく。 

 して、本作の数少ない魅力、見どころを探してみれば。。。
オードリーが美しいとか愛らしいとかを除けば以下の通り。
1.過去の様々な映画への言及、オマージュ、コピーの数々。それを当てるのが映画ファンの喜び。
2.自己言及映画であるからには、映画製作者へのオマージュも当然に。例えばダルトン・トランボと思われる脚本家への言及もあり。
3.エッフェル塔の姿、パリ祭の様子。しかしパリ祭当日の広場の様子はスタジオ撮影見え見えで興ざめ。なんとかならんのかね。
4.オードリーの衣装。当然にもジバンシーのデザイン。特筆すべきはナイトガウン。こんな素晴らしすぎる「ネグリジェ」を着て寝る人が本当にいるのか?!!
5.「端役ですらまともに演じられない」とさんざんコケにされた役者がトニー・カーティス。気の毒に。
6.マレーネ・ディートリッヒが一瞬登場する、無駄遣いとも言える場面での堂々たる女優ぶりが素晴らしい。さすがのオーラを放っている。
tsutaya動画配信)

PARIS - WHEN IT SIZZLES
110分、アメリカ、1963
監督:リチャード・クワイン、製作:リチャード・クワインジョージ・アクセルロッド、原作:ジュリアン・デュヴィヴィエアンリ・ジャンソン、脚本:ジョージ・アクセルロッド、音楽:ネルソン・リドル
出演:ウィリアム・ホールデンオードリー・ヘプバーントニー・カーティスノエル・カワードマレーネ・ディートリッヒ