吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

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 王室ものというのはある意味手堅くヒットが狙えるから映画にしやすいんだろう。とりわけグレース・ケリーのようなシンデレラ物語となった美しすぎる女優・王妃の物語なら当然、絵になります。ニコール・キッドマンはかなり雰囲気が似ているし、背が高くてスタイルがよいから何を着ても似合う。美しい。王宮も素晴らしい。というわけで、目の保養になりました、というだけだったような気がするが、彼女が国王の政治に口出しをして夫である国王から「子どもたちの世話をしろ!」と怒鳴られるシーンがなかなか迫力あってよかった。やはりどこの王室も女は黙ってろという時代だったのだ。今だってそうだもんね、特に日本は。
 それにしても全く知らなかった事実は、モナコが事実上フランスの保護下にあるということ。ガスも電気もインフラはフランスから供給されている。これでよく独立国のメンツが保てると不思議だ。そこに王家の内紛もからみ、結構サスペンスフルにお話は進む。どこまで史実なのかはよくわからないが、ヒチコックがいつまでもグレース・ケリーに執心して映画出演のオファーをかけていたというのが面白い。
 人間模様の描写はそれなりに興味深く、海運王オナシスやその愛人だったマリア・カラスが何度も登場するなど、有名人のわき役も個性があって映画的なきらめきがあるのだが、肝心のグレース公妃の一世一代の演説がなぜモナコを救ったのか、理解できなかった。ヒチコックの「マーニー」製作の裏話としては面白かったけどね。(U-NEXT)

GRACE OF MONACO
103分、フランス/アメリカ/ベルギー/イタリア、2014
監督:オリヴィエ・ダアン、脚本:アラッシュ・アメル、音楽:クリストファー・ガニング
出演:ニコール・キッドマンティム・ロスフランク・ランジェラパス・ベガ、パーカー・ポージー