吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

gifted/ギフテッド

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 また一人天才子役が現れた。前歯の抜けたなんともいえない愛らしい顔に、長い睫毛を震わせながらくちゃくちゃの顔で笑う、抱きしめたくなるようなマッケナちゃん! 天才子役が天才少女を演じる。これはもう地でそのまま天才という雰囲気が全身から蒸発しまくっている。
 天才少女のメアリーは7歳にして高等数学の難問を解いてしまうような驚異の才能を見せて周囲を驚かせる。実はメアリーの母がまた不世出の天才数学者だったのだが、赤ん坊のメアリーを残して自殺してしまったのだった。そしてメアリーは母の弟であるフランクの手で育てられる。フランクはメアリーをふつうの子どもとして育てようとしていたので、メアリーの才能に気づいた教師たちの勧めを断って彼女に英才教育を施すことを拒否する。ところがここに現れたのがおばあちゃんのイブリン。イブリンもまた数学者だったのだ。なんという一家だ、学者・天才の家系は幸せなのか不幸せなのか。
 フランクを演じたのはキャプテン・アメリカクリス・エヴァンス。まったく違う雰囲気で、とてもやさし気な憂いを帯びた瞳が魅力的。メアリーの担任教師とデキてしまってメアリーにばれる場面など、とてもユーモラスだ。メアリは子どもだけれど多くのことを見抜いている。でもやっぱり子どもだから詰めは甘い。そして、誰よりも愛を求めているのだ。
 訴訟社会のアメリカは親子といえども簡単に裁判を起こしてしまうのだから恐ろしい。メアリーの育て方をめぐって対立する祖母と叔父。その間にたってメアリーの幸せは誰が見つけるのだろう? 誰もがメアリーを愛し、メアリーを大切に思っているに違いないのだが、天才少女をどのように育てるのかは大いに見解が分かれてしまう。娘に死なれてもなお反省しない母親は、結局のところ自分の欲望と野望を娘に投影していただけなのだろう。娘亡き後は孫に希望を託す。
 いつだって、子どもには子どもの人生がある。本人が望まない未来を大人が押し付けることはできない。とはいえ、教育そのものがある意味押し付けなのだから、才能というのはやっぱり周囲が気づいて手を施さないといけないのではないか。いろいろ考えさせられる映画だった。でもそんなふうに理屈っぽい作品ではなく、マッケナちゃんのかわいらしさに微笑み癒される100分でした。(レンタルBlu-ray

GIFTED
101分、アメリカ、2017
監督:マーク・ウェブ、製作:カレン・ランダー、脚本:トム・フリン、音楽:ロブ・シモンセン
出演:クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、リンゼイ・ダンカン、ジェニー・スレイト、オクタヴィア・スペンサー