吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

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 ちょっと変わったタイムスリップもの。といっても、行けるのは過去だけで未来は無理。自分の経験がたどれるだけで、他人のは不可能なので過去に行ってヒトラーを暗殺できない。

 で、何がいいかというと失敗を全部やりなおせるってことと、同じ本を何度も読めること!! なんじゃーそれ。タイムトラベルができるなら、もっと大胆にいろんなことができそうなのに、わりとちまちましたことにしか使わないっていうところが主人公一家の節度のあるところなのかな。この一家は代々の男たちがタイムトラベルできるという能力を持っているのだ。それを21歳の誕生日に父から知らされたティムは、早速その力を使って素敵な恋人を得ようと頑張ってみるのだが。。。。
 主人公ティムが全然すかっとしてないところがいいね。でもわたしの好みのタイプじゃないし、なんだか頼りないしいまいち。そんな男でも過去に戻ればいろいろとやりたい放題できるんだよ、というところか。これは完全に男の子の願望物語。
 人間はいつだって生き直せるしやり直すことは可能だと思うけれど、それは未来に向かってであって、過去を書き直してしまうなんて、それは得手勝手というもの。それではきっと人生は楽しくないとわたしは思う。いろんなことに悩み後悔し地団太を踏んだり自分を恨んだりするからこそ醍醐味があるというもの。そんな簡単にやり直せるなら、一期一会の感動がないやんか!
 で、どんなに過去に戻れたって、人間の寿命を変えることはできないし、変えられない過去だってある。変えてはいけない過去もある。さてどうすればいいのか。ティムは悩む。素敵な恋人を得て幸せに生きていたって、すべてが手に入るわけではないと彼は気づく。ここがよかったね。
 しかしわたしが不思議に思ったのは、一族の男がみんな過去に戻って事実を修正できるなら、全員が同じように過去を変えまくったらいったいどうなるのか? 輻輳した過去はいったいどうなるんだろう。最後はしみじみして終わったからよかったけれど、最初のうちはどうなることかと心配になるような作品だった。

 ティムの妹の「キットカット」!(こんな名前、あるの?) この変人キャラが最高によかった。(レンタルDVD)

ABOUT TIME
124分、イギリス、2013
製作総指揮・監督・脚本:リチャード・カーティス、音楽:ニック・レアード=クロウズ
出演:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムスビル・ナイトム・ホランダーマーゴット・ロビー、リンゼイ・ダンカン