吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ゲティ家の身代金

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 大学院の授業の折に、INUE先生がヨーロピアナの解説をされていて、「ゲティ財団のおかげでヨーロピアナで日本の著作者を日本語で検索できる」とおっしゃった。その言葉聞いた瞬間に映画マニアの社会人院生IMNさんが目を輝かせて、「それはひょっとして『ゲティ家の身代金』のゲティ財団でしょうか」と口走った。
 などということを思い出しながら見ておりました、本作は予想以上に面白かった。さすがはリドリー・スコット監督、絶対に観客を飽きさせない引き締まった演出。
 実話ベースと言いながらどこまでが本当なのかよくわからないなあと油断しないように見ていたのだが、世界一の大金持ち、ジャン・ポール・ゲティ爺さんの吝嗇ぶりに驚く。誘拐された孫の身代金1700万ドルは確かにはした金ではないが、かといってゲティ爺さんになら楽に払える金額なのに、一銭も払わないと主張する。孫の母親、つまり自分の息子の元妻が懇願しても聞く耳を持たない。誘拐されたポールの母親ゲイルは毅然とした態度を貫き、取り乱したりすることなくマスコミの前でも振る舞う。守銭奴ゲティとの対比もわかりやすく、興味深い人間模様が描かれている。主な登場人物であるゲティ、ゲイル、さらにはゲティに雇われた元CIA職員のチェイス。この三人がそれぞれに個性が際立ち、演じている役者もみなうまいため、見ごたえあるサスペンスが成立している。わたし自身は1973年に起きたこの事件のことを全くと言っていいほど覚えていなかったので、結末も知らずに見ていたから余計に手に汗握った。
 ポールの世話をする小汚い小悪党がロマン・デュリスに似ているなぁと思っていたら、本人だった。すっかりおじさん化しているが、憎めないおいしい役をもらっている。役者が皆、よい味を出しているのもリドリー・スコット監督の手腕であろう。この作品がいくつもの映画賞の候補になったのも頷ける出来。身代金の値下げ交渉やゲティの貪欲ぶり、ゲイルの勇気と機転、といったエピソードの数々がまとまりよくつながっていて、見ごたえある一作になっている。ローマやイギリスの邸宅、街並みといった歴史を感じさせる風景も見どころの一つであり、音楽や美術作品の数々も素晴らしい。博物館・美術館が登場するからミュージアム映画の一つとも言える。
「当初ジャン・ポール・ゲティ役だったケヴィン・スペイシーが作品完成後にスキャンダルで降板となり、急遽クリストファー・プラマーが代役に起用され、限られたわずかな期間での再撮影を敢行、最終的にはアカデミー賞ゴールデン・グローブ賞にノミネートされる前代未聞の快挙でも大きな話題となった」という解説を読んでびっくり。よくぞそんなことができたもんだ。そうなると、お蔵入りになったケヴィン・スペイシーの特殊メイクによるゲティの姿も見てみたいと渇望してしまう。DVDリリースの特典映像に入れたら売れるんじゃないかな。 
 拝金主義者に見せたい映画です。

ALL THE MONEY IN THE WORLD
133分、アメリカ、2017

監督:リドリー・スコット、製作:クリス・クラークほか、原作:ジョン・ピアソン、脚本:デヴィッド・スカルパ、撮影:ダリウス・ウォルスキー、音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:ミシェル・ウィリアムズクリストファー・プラマーマーク・ウォールバーグ、チャーリー・プラマー、ロマン・デュリスティモシー・ハットン