吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

外泊

 2007年6月30日に始まった、ホームエバー・ハイパーマーケット労働争議を追ったドキュメンタリー。
解雇通告を受けた500名の女性パート労働者がスーパーのレジを占拠し、泊まり込みをするという、「結婚して以来初めての外泊が労働争議」という女性たちの闘いを活写する。
 カメラが被写体に大変近いので、どうやって撮ったのかと不思議になるほどだ。警察にごぼう抜きにされるところも接写している。労働運動のドキュメンタリーを撮り続けていたキム・ミレ監督が新たな素材を探しているときに、レジ占拠の噂を聞きつけて一緒に泊まり込みにいったのが、巻頭の場面である(『外泊外伝』現代企画室, 2011の「訳者あとがき」による)。だから本作は闘争の最初から最後までずっと労働者たちに寄り添い続けている。


 この争議についてはドラマ「明日へ」が作られた。ドラマは主人公が決まっているけれど、「外泊」の方は誰か一人にフォーカスすることのない群像劇になっている。

 支援する労組との関係がいまいちわかりにくく、さらにその支援労組である民主労総が分裂するという事態になり、さらには政党の支持も得るが、これまた分裂するというわけのわからないことにもなるので、背景の解説がないと理解に苦しむ。そもそもなぜ職場占拠・籠城という手段に出たのか、その結論が出る過程がよくわからない。もともと彼女たちは労組員だったのかどうかもわからない。


 支援労組の大会で組合幹部が女性たちのことを「おばさん」と呼んでいる場面にわたしはカチンときたが、会場に座っていた女性の一人が立ち上がって幹部を批判し、「おばさんと呼ぶとは失礼だ。ハイパーマーケットの組合員たちに謝罪してほしい」と怒っていたのですかっとした。


 争議そのものは幹部の解雇という犠牲を生み、決して全面的勝利に終わったわけではないが、最後まで闘った女性たちの思いに涙した。
 気になったことは、「早く争議を解決して、良き妻、良き母に戻りたい」と訴える女性の姿。こういう思考を変革できない限り、女性の地位向上はない。夫も「もう皿洗いや掃除はこりごりだ。早く妻を家に戻してくれ」と争議応援のつもりで語っているところに違和感を覚える。(DVD)

韓国
2009
73分
監督:キム・ミレ