吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ルイの9番目の人生

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 ファンタジー色に染められたサスペンス。こんな不思議な映画もあるんだ、と瞠目。

 これは演出に賛否両論が出そうな出来だが、つまり、ファンタジーなのかミステリーなのかはっきりしない中途半端さが子供だましっぽい、という点。しかし、わたしはこういうミステリーもありなのか、と驚いた。
 物語はこうだ。9歳のルイは崖から落ちて意識不明の重体。彼は病院のベッドに寝た切りになっているが、映画はルイの独白で進む。ルイは赤ん坊のときから重大な病気やけがに8度も見舞われてきた。ついに今度が9回目になる。ここまで繰り返されると、親の虐待が疑われるレベル。案の定、こんどの転落事故は父親が被疑者となっているのだが、その父は逃亡して行方不明。ルイの美しい母ナタリーが息子の病室に毎日つきっきりで見守っている。ナタリーの周りには男たちがわらわらと寄ってくる。ルイの主治医も例外ではない。

 やがて母ナタリーのもとに不思議な脅迫文が届く。それは意識不明のルイが書いたのか? 失踪してしまったルイの父の行方も杳として知れず、警察の捜査は暗礁に乗り上げる。
 意識不明のルイが物語る過去と現在と未来は、どこまでが真実なのか判然としない。そして、何度も現れる「水」のイメージが、ルイの存在の浮遊感を表す。時にぎょっとさせるような鋭い視線を送るルイ自身の恐ろしさもまた特筆ものだ。ルイがセラピーに通っていた事実も語られていき、幼いルイが大人のような観察力と洞察力で周囲の人間を見ていたこともよくわかる。彼はいったい何者なのか。果して意識は戻るのか。衝撃の真実が明らかになるとき、ルイの9番目の人生はまったく新たな展開を見せるのだろうか。

 

<以下ネタバレ>

 

 

 とはいえ、終わってみれば結局、悪いのは母親。恐ろしいのは女、ということで。これもまたミソジニー映画だったのである。まあ何といってもラストシーンのナタリーのたたずまいの怪しくも美しいこと! たまりませんねぇ。懲りない精神科医はこのままナタリーの奴隷か。

THE 9TH LIFE OF LOUIS DRAX
108分、カナダ/イギリス、2015
監督:アレクサンドル・アジャ、製作:ショーン・ウィリアムソンほか、原作:リズ・ジェンセン、脚本:マックス・ミンゲラ、音楽:パトリック・ワトソン
出演:ジェイミー・ドーナンサラ・ガドン、エイデン・ロングワース、オリヴァー・プラットモリー・パーカー、ジュリアン・ワダム