吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

イップ・マン 継承

f:id:ginyu:20180416153929p:plain

これはもう完全に、イップマンという実在の人物の姿を借りた作り話だ。イップ・マンの伝記でもなんでもない。そう思ってみる方がいい。で、作り話ゆえにとっても面白い。
 イップ・マンのシリーズを見ていると、中国人は全員カンフーができるんじゃないかと勘違いしそうになる。どこでも誰でもカンフーの構えをしている。

 舞台は前作に続いて香港。1959年ごろのお話だが、イップ・マンも妻も20年前から全然変化なし。本作では敵役の悪徳不動産王をマイク・タイソンが演じている。さすがに繰り出すパンチが速い。

 アクションシーンは少々退屈で、もう飽きたわ、という感じになってしまうのでやはり途中で寝てしまうのである。しかし、クライマックスの対決は大変見ごたえがあった。イップ・マンが低い位置から片足をまっすぐ伸ばし、残りの脚を折りたたんで腰で座っている姿勢などは、思わず真似したくなるが、全然できない。速い動きの連続技ではなく、静かな緊張感が漂う様式美の構えの場面が印象に残る。
 若き日のブルース・リーも登場する。相変わらずイップ・マンは人格者であり、穏やかで人情味のある人物だ。今回のテーマは家族愛。もともと本シリーズは家族愛が大きなテーマであったことは間違いないが、妻の死という重大な事件が起きるだけに、その風合いが強い。イップ・マンは恐妻家ということになっていて、こんなジョークが語られる。
 「ある時、恐妻家の集まりの席で、ある人物が『妻が怖い人はこちら側に座ってください』と言った。一人だけ、そちら側に行かない人がいたので、ああ、この人は恐妻家じゃないんだ、と皆に思われた。『なぜこちら側に座らないのですか』と尋ねられた彼は答えた。『妻がそちらに行くなと言うので』」

葉問3
105分、中国/香港、2016
監督:ウィルソン・イップ、アクション監督:ユエン・ウーピン、製作:レイモンド・ウォン、脚本:エドモンド・ウォン、チェン・タイリ、ジル・レオン、音楽:川井憲次
出演:ドニー・イェン、マックス・チャン、リン・ホン、パトリック・タム、マイク・タイソン、チャン・クォックワン