吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ローガン・ラッキー

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 こんなおまぬけな連中に金庫破りができるのか? アホすぎるやろ。そんな杜撰な計画、上手く行くほど世の中甘くない! などなど、画面にツッコミを入れながら見ていたが、とにかく楽しい。
 「オーシャンズ11」のときのような華麗なるプロの技ではなく、ド素人のアホ計画でもなぜかうまくいってしまうという面白さを描いてくれたソダーバーグ監督、本作もなかなかよろしいです。何よりも、ダニエル・クレイグのヘタかっこよさ、チャニング・テイタムの頭が悪いのか良いのかさっぱりわからないかっこよさ、いずれもとっても良い出来。オフビートの笑いも相まって、個人的にはとっても受けた映画であります。唯一賢そうだったのはFBI捜査官のヒラリー・スワンクだけだったね。
 舞台がウェストバージニア州というのが最後のほうの落ちで利いてくる、というのも泣かせる布石。なんだかんだと伏線ははってあるんですよ、みなさま。チャニング・テイタムは相当に体重を増やしたようで、顔も四角くなっているし、身体全体にしまりがない。ダニエル・クレイグジェームズ・ボンドの時のスマートさがみじんも感じられなくて田舎のおっさんなのに、でもかっこいいんだわ、女殺し!
 今回は、失業して金がなくなったジミー・ローガン(チャニング)が、ローガン家の呪いを解くべく、一獲千金を夢見てNASCARのビッグ・イベントで現金奪取を狙う。わたしはそもそもこのNASCARなるものを知らなかったから、これがどれほど大きなイベントなのかわからないのだが、カーレースであって、観客がみな興奮のるつぼにはまっているすきにアリーナの店頭売り上げ金を奪ってしまうという作戦なんですな。何しろ今どきはカード社会だから、現金取引が極端に少ない。じゃあ売上金強奪のためにはどうすればいいんだ。そうか、カード払いをできなくすればええんやんか、頭ええで、俺たち。というわけで、いろいろ仕掛けました、ローガンきょうだい。兄と弟と妹もまきこんで、一家総出でねらった大金はどうやって手に入れるのか? それはね、刑務所で服役中の金庫破りの爆破魔のダニエル・クレイグおじさんを脱獄させて、仕事させるのよ、そして誰も気が付かないうちにこっそり刑務所に戻すわけ。どう、すごいアイデアでしょ。さーて、そんな風にうまくいくんでしょうか。
 このローガン兄弟のキャラの立ち方が半端なく面白い。弟がアダム・ドライヴァーですよ、あの「スターウォーズ」最新作でダースベーダーの孫を演じた彼ですよ。こういうとぼけた役をやらせる方が似合ってるかもしれない。ローガン家の呪いというのはそもそも、戦争に行って片腕を吹き飛ばされるとか、フットボールの花形選手だったのに故障に泣くとか、金を巻き上げられるとかその他いろいろ、一族郎党にはいろんな不幸が舞いおりている、というそういうこじつけがましい話なんだけれど、当のローガン兄弟がそれを信じているっぽい点が救いがたい。で、彼らはそういう不幸を全部吹き飛ばす〈グレートリセット〉をやってのけようとするわけですね。
 主要な登場人物がみんな頭が悪そうなところに突然現れたFBI捜査官のヒラリー・スワンク! 彼女の登場シーンのかっこよさったらありませんよ。これも見所のひとつ。
 わたしは映画のタイトルをどうしても覚えられなくて、何度も「ラッキー・ローガン」と言い間違えてしまう。劇場の窓口でも言い間違えたけど、ちゃんと正しいパンフレットを売ってくれたよ、おにいちゃん、ありがとう。あ、頭が悪いのはローガンきょうだいだけじゃなかった!(←おまえもか

LOGAN LUCKY
119分、アメリカ、2017
監督:スティーヴン・ソダーバーグ、製作:チャニング・テイタムほか、脚本:レベッカ・ブラント、音楽:デヴィッド・ホームズ
出演:チャニング・テイタムアダム・ドライヴァー、ライリー・キーオ、ケイティ・ホームズヒラリー・スワンクダニエル・クレイグ