吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

アラビアの女王 愛と宿命の日々

 「アラビアのロレンス」を二回りぐらい小さくしたような映画。
 最後まで見終わってもう一度巻頭のシーンに戻れば、それが何を意味するのかがよくわかる。巻頭のシーンに登場する人物は、チャーチルT.E.ロレンス、イギリス領事。。。彼らは第一次世界大戦後のオスマン帝国の分割について話し合っているのだ。これが後々火種となる「フサイン・マクマホン協定」などの下書きなのだろうか。

 アラビアのロレンスも登場するこの映画は、ニコール・キッドマンが演じるガートルード・ベルが美しく賢く魅力的なためにうっかり年齢を間違えそうだが、ロレンスとは親子ほど年が離れていたのだ。ガートルードは19世紀末のイギリス女性としては珍しくオックスフォード大学を卒業、しかも首席で修了している。あまりの頭の良さに求婚する男もなく、しかしもててもててしょうがなかったみたいだけど、とにかくイギリス本国にいることを潔しとしないガートルードはアラビアにやってくる。ダマスカスのイギリス領事館のスタッフと恋に落ちるも、彼は自殺。その後、なんやかんやとあってイギリス領事と恋に落ちるが。。。。 
 というわけで、「アラビアのロレンス」とは相当に趣が異なる。恋愛の「れ」の字もなかったアラビアのロレンスとは違って、ガートルードはやたら男にもてるので、恋愛物語となっている。ほんとうだったら、こちらのほうが映画的には興行成績がよさそうなのに、映画史的には名作はやっぱり「アラビアのロレンス」で揺るがない。とてももったいない。「アラビアの女王」も音楽良し、風景良しのよい映画なのに。でもやっぱり二番煎じなんだろうなぁ、しょうがない。
 彼女のことはまったく知らなかったので、たいへん興味深かったが、キャラの立っていない男性陣のせいでいまいちわかりにくい展開。ヘルツォーク監督がこんなまともな映画を撮るのか、と驚きの一作だったが、まともなだけに普通になってしまったところが悲しい。とはいえ、個人的にはこの時代の歴史には大変関心があるので、とても面白かった(でも途中かなり爆睡したので、2回半ぐらい見直した)。
 砂漠を旅する西欧の女性が月経のときはどのように対処したのか、それが気になってしかたがなかった。そこが知りたい!!(U-NEXT)

QUEEN OF THE DESERT
128分、アメリカ/モロッコ、2015
監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク、撮影:ペーター・ツァイトリンガー、音楽:クラウス・バデルト
出演:ニコール・キッドマンジェームズ・フランコダミアン・ルイスロバート・パティンソン、ジェイ・アブド、ジェニー・アガター、クリストファー・フルフォード