吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ラスト・フェイス

 劇場未公開なのでむべなるかな、というようなわかりにくい作品。キャスト・スタッフともに有名人をそろえているのに、結局劇場では見られないのかな。
 国境なき医師団から分派した「世界の医療団」に所属する二人の医師の壮絶な活動と愛を語る物語。おそらく原作があるのだろう、シャーリーズ・セロンが演じたヒロイン、レン・ピーターセンが書いた手記がもとになっていると思われる。
 父である医師が創設した「世界の医療団」の医師となって自らもアフリカ内戦の地に赴くレンは、そこで難民たちの治療にあたるスペイン人医師のミゲルと出会う。ミゲルと愛し合うようになるレンだが、内戦のあまりの凄惨な現実に耐えられなくなり、現場から引き上げることを決意する。そして彼女はパリに本部を置く世界の医療団の資金調達役として活動することになる。
 物語は、それから10年後の「現在」から始まる。そして、何度も時制を変えながら、物語は進む。難民キャンプの言語を絶する悲惨な状況や、エイズに罹患する医師、現場での男女の愛憎などを交えて展開するが、何しろこのすべてがとても複雑に描かれているものだから、一度見ただけでは全然理解できず、結局わたしは2回半鑑賞することになったが、それでも「国境なき医師団」と「世界の医療団」の違いがさっぱりわからなかった。
 それはともかく、この映画は「正義感」とか「ボランティア精神」では太刀打ちできない厳しい現実を前にして、先進国の人間に何ができるのかを鋭く問う、とても重いものだ。恋愛物語としてはあまりに甘さがなく、戦争映画としてはあまりにアクションがなく、社会派作品としてもわかりにくい。そもそも、なぜ主人公たちは10年も別れていたのだろう。そして、なぜ10年の時を隔ててまた愛し合うようになったのか、まったく不可解だ。しかし個人的にはこういうのもありだとは思う。彼らはまだ若いから、10年のブランクがあっても再び愛し合うことができるが、もう老人になってしまった人たちにはこういう再会物語は不可能かもしれないなぁとしみじみしてしまった。

 「わたしたちは難民を難民としかみない。けれど彼らは一人ずつ職業を持ち、わたしたちと同じだ。わたしたちと同じように夢を持ち、夢を見ている」というレンの最後の言葉がこの作品の主張、そしてなによりも心に響く言葉だった。


 そうそう、「アデル ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロスが出ている。残念ながら全然魅力的じゃない。(U-next)

THE LAST FACE
131分、アメリカ、2016
監督:ショーン・ペン、脚本:エリン・ディグナム、音楽:ハンス・ジマー
出演:ハビエル・バルデムシャーリーズ・セロンアデル・エグザルコプロスジャレッド・ハリスジャン・レノ