ティム・バートンのカラー爆裂! やっぱりティム・バートンです。このおどろおどろしさ。不気味さ。異形の者たちへの愛。すべてがたいへんよろしい。
舞台が第二次世界大戦中のイギリスというのもクラシックな感じがしてよいし、ドイツ軍の空襲を逃れるために同じ一日を繰り返す子どもたち、という設定は手塚治虫の「火の鳥」の比丘尼を思い出せる。仏教の因果応報ものみたいだね。永遠に同じ時間を繰り返すというのは拷問のような毎日に思える。わたしは「このまま時間が止まればいいのに」とかつて願ったことがあったが、それは拷問かもしれない。時は流れ、一瞬たりとも同じ瞬間が存在しないこと、それこそが人を人たらしめる根源ではなかろうか。時間の概念を所有するのは人間だけなのだから。したがって、この物語のキモは、永遠の時間の循環に閉じ込められた子どもたちがいつそのくびきから解放されるのか、というところにある。
物語は後半、人間からモンスターに変化してしまった悪人たちを成敗するために、子どもたちがそれぞれの超能力を発揮する。そのアクションシーンがまた楽しい。しかし、残念ながら映画はその楽しさと引き換えに豊かな問いかけを失い、ユーモラスなお化け屋敷譚へと落ちてしまう。それでも最後まで十分楽しめるけれどね。 (Blu-ray)
MISS PEREGRINE'S HOME FOR PECULIAR CHILDREN
127分、アメリカ、2016
監督:ティム・バートン、原作:ランサム・リグズ『ハヤブサが守る家』、脚本:ジェーン・ゴールドマン、撮影:ブリュノ・デルボネル、音楽:マイク・ハイアム、マシュー・マージェソン
出演:エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド、クリス・オダウド、アリソン・ジャネイ、ルパート・エヴェレット、テレンス・スタンプ、サミュエル・L・ジャクソン