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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

海すずめ

映画

 

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空手家図書館員の井上昌彦さんの発案により、急遽4人による映画鑑賞会が開かれた。なんばパークスシネマで朝の9時からの上映に、ぎりぎりに滑りこんだがこれが予定を大幅に超えてしまった。というのも、なぜか8階に上がるエレベーター前が大行列で、上がれるまでに15分くらいかかりそうな勢い。映画館のスタッフが3,4人整理に当たっていたが、もうわたしが見る映画は本編が始まったよー。「上映開始時刻が迫っているお客様はお声をかけてください。優先的にエレベーターに誘導します」との言葉にすがって、大行列をしり目にエレベーターに乗せてもらえた。しかし本編開始後5分ぐらい経ってしまったので、巻頭を見逃した。 

 その大行列の原因はアニメ「ワンピース」であったことが後ほど判明する。グッズ売り場もワンピース関連商品を求める若者の大行列で大変なことになっていたのだ。でもわたしたちのスクリーンはガラガラだった。

 さて、映画は。この手の町興し映画で面白いものはめったになくて、ひどいものになると学芸会以下の作品もあるが、本作は期待以上に楽しんで鑑賞することができた。図書館員的には突っ込みどころ満載で、そういう意味でも見終わった後のランチ会では4人で話が盛り上がってかなり楽しめた。
 物語の舞台は愛媛県宇和島市。「宇和島伊達400年祭」が行われる2015年、祭りの準備真っ最中に宇和島市図書館で起きる「ある出来事」を描く。宇和島って今でも江戸時代だったんだねー、びっくりしました。伊達家13代当主が本人役で登場。あまりにもお上品でお公家さんみたいな歌舞伎役者みたいな男前ぶりにも二度びっくり。さすがに「藩主」とは呼ばれないし、「お上」とも呼ばれないけど、側近には「ご当主様」と呼ばれるお殿様なのである。

 主人公は1作目でたまたま新人文学賞を獲ったけれども2作目が書けないスランプ小説家の赤松雀。東京から宇和島市に戻り、今は市立図書館自転車課に勤務している。なんと、この図書館には自動車文庫ならぬ自転車で本を届けるスタッフがいたのだった。スタッフは雀以外に、元ロードレーサーの岡崎、バイトの原田ハナという若者3人組である。宇和島伊達400年祭のハイライトを飾るのはお姫様の復刻衣装。その模様が描かれた本が図書館にあったはずなのに所在不明になっている。館を挙げて探すのだが、見つからない。あと3日以内に本が見つからないと復刻衣装を作ることができない。タイムリミットに向けて雀たちは懸命に本のありかを探すのだが、、、、

 という、少しだけスリルのある青春もの。図書館が舞台になっているけれど、図書館の描き方はけっこうおざなりで、それよりも自転車に力が入っている。坂の多い町の中を爽快に走り抜ける自転車が気持ちいい。しかしなぜか下り坂の場面しか映らないのよね。登りは撮影できなかったのか(笑)。自転車課のメンバーは市内のいろんな場所に本を届ける。船に乗って離島にも出かけるし、みかん畑で作業中の農民にも本を届けるし、バスを運転中の運転手にも届けるんだよ(をい、いいのか)!

 図書館的にもアーカイブ的にもアウトでしょう、という描写がゾロゾロ出てくるし、本好きの図書館員というステレオタイプの描き方も噴飯ものだけれど、まあそれもこれもやっぱり図書館てそんな風に見られているのね、とやむなく納得。わたしが見逃した巻頭では、主人公がレファレンスを放置したまま数か月経ってしまったというありえない状況も描かれていたらしいし、この映画には図書館関係者の監修がついてなかったんだろうなぁと思わせる。 

 それでも、戦争中の悲しい思い出や書けない作家の苦しみなど感涙のツボも用意されていて、退屈しない展開。「日本一美人な図書館長」という館長のキャラクターもなかなか良いし、部下の図書課長の嫌味ぶりも大変よろしい。

 風光明媚な場所柄をよく表した明るい画面が気持ちよく、さらに室内撮影も光をふんだんに取り入れているため、画面に華やかさやあたたかな光が溢れている。
 宇和島の美しい風景も楽しめて、地元民大喜びの映画でありました。「伊予銀行」の文字が何度もさりげなく目立って登場していた。やはり協力者としてかなり出資している模様。

 

 以下、ネタバレの一言。

 

 

 


 図書館員が自館の資料を借りたままで返却しないってそんなのあり?

108分、日本、2016
監督: 大森研一、エグゼクティブプロデューサー: 大森研一、重村博文、川村英己、撮影: 今井哲郎、音楽: 中橋孝晃、主題歌: 植村花菜『ただいま。』
出演: 武田梨奈、小林豊、内藤剛志岡田奈々目黒祐樹宮本真希二階堂智、佐生雪、野川由美子赤井英和吉行和子