昨日に続いてウディ・アレンの作品紹介。
なんと、オルネラ・ムーティが出ていたんだ! どこにいたのか全然わからない。彼女のもう還暦を超えたのだから、いいおば(あ)さんになっているだろう。ひょっとしてナイフを振り回していたエキセントリックな母親役かな?
先日劇場で見たウディ・アレンの最新作「教授のおかしな妄想殺人」がいまいちだったのだが、「ローマ」はなかなか楽しくてはじけている。
アレンがヨーロッパを舞台に作った一連の作品の中で最新のもの。ローマを舞台に描かれるドタバタの群像劇で、ウディ・アレンが主役ということになっているが、誰が主役でもない作品だ。
同時並行で進行するエピソードは4つ。ウディ・アレンはアメリカから娘の婚約者に会うために妻とともにやってきたオペラの演出家。妻の婚約者の父親が美声の持ち主であることを知って、彼を担ぎ出すことを狙う。
ロベルト・ベニーニはごく平凡な男だが、ある日突然「有名人」になってパパラッチに追いかけまわされることになる。
ジェシー・アイゼンバーグは恋人とイタリアに滞在中の若者で、恋人の友人である女優がアメリカからやってきたところから妙な雰囲気になり。ここでジェシーの心の声としてアレック・ボールドウィンが登場するのが面白い。
田舎からやってきた新婚夫のホテルの客室に突然やってきたコールガールはペネロペ・クルス(適役!)。「代金は済んでいるわ、楽しませてあげる」と純朴な新婚夫に迫る。
という4つのお話がまったく交差することなくスピーディに展開する。いずれもアモーレが絡んだ騒動が巻き起こり、笑いながらもアレンの社会風刺や人間観察の確かさに感心する。特にパパラッチに取り巻かれてノイローゼになるロベルト・ベニーニの話。「大衆の関心」なんてこんなものだということをあまりにも漫画的に描いて、お見事。彼がもはや有名人でなくなった後の「祭りの後の虚しさ」と「有名病」のような発熱ぶりが哀れだった。
ウディ・アレンがオペラの演出家のくせにイタリア語がわからないというところも笑わせる。そのうえ、新作の演出がめちゃくちゃ斬新で、大笑い。とにかくにぎやかなお話で、見た後に「あー、面白かった」と思わせる映画。やっぱりアレン本人が登場する映画は面白い。
これでようやくヨーロッパ四部作を全部見たことになる。評価は以下の通り。
パリ=ローマ>ロンドン>バルセロナ
(レンタルDVD)
TO ROME WITH LOVE
111分、アメリカ/イタリア/スペイン、2012
監督: ウディ・アレン、製作: レッティ・アロンソンほか、撮影: ダリウス・コンジ
出演: ウディ・アレン、アレック・ボールドウィン、ロベルト・ベニーニ、ペネロペ・クルス、ジュディ・デイヴィス、ジェシー・アイゼンバーグ、グレタ・ガーウィグ、エレン・ペイジ、オルネラ・ムーティ