吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

リストランテの夜

 

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 たぶん20年ぶりに再見。スタンリー・トゥッチが主役だったとは! 若い! 髪の毛がある! しかも監督までしていたとは知らなかった。

 1950年代、イタリア系移民兄弟が経営するレストランの物語。腕は間違いなくいいのに、味オンチのアメリカ人には受けない凝った料理ばかり提供する兄の料理に文句を言う、経理担当の弟。「もっと、アメリカ人が好むものを出してくれ。わかりやすい料理がいいんだ!」
 二人はしょっちゅう兄弟げんかをしているが、兄のこだわりがわたしにはとってもよく理解できる。大衆の好みに合わせなくていいんだよ! でも儲からないと店がつぶれるだけだしね。ここがつらいところ。

 全編にわたって軽快なコメディ映画で、とりわけクライマックスには次々と美味しそうなイタリア料理が出てくるから、もう目が釘付け。飯テロのレベルを超えている! 料理とともに音楽とダンスの狂騒が始まり、徹夜で歌い踊り食べ散らかして、翌朝は「祭りの後」の寂しさが漂う。

 この映画では、成功しているイタリアレストランからの引き抜きに対抗しようとする兄弟の矜持とともに、その成功者をうらやみ真似しようとする複雑な心境も描かれていて、なんだか身につまされる。アメリカンドリームは成功した者だけに優しく、負けて終わりとなる人々には切ないものだ。イタリアから成功を夢見てアメリカにやってきた兄弟の夢は破れた。けれど、二人が黙って朝食を食べるラストシーンにはそこはかとない安らぎとしみじみとした諦観が漂って、いつまでも舌に残るジェラートのような味わい。

 スタンリー・トゥッチは本作以後、ほとんど監督をしていないようだ。確かにこんないい作品を作ってしまったら、もう満足して終わりになるかもしれないね。

 イザベラ・ロッセリーニ、この時は44歳。グラマラスで色気たっぷり。(レンタルDVD)

シェフとギャルソン、リストランテの夜

BIG NIGHT
リストランテの夜(ビデオ)
109分、アメリカ、1996 
監督: スタンリー・トゥッチキャンベル・スコット、脚本: ジョセフ・トロピアーノ、スタンリー・トゥッチ、撮影: ケン・ケルシュ、音楽: ゲイリー・デミシェル
出演: スタンリー・トゥッチキャンベル・スコットトニー・シャルーブ、 
イアン・ホルム、ミニー・ドライヴァー、イザベラ・ロッセリーニ