吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

インサイダーズ/内部者たち

 

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この映画は確か、3月に見たはず。後で感想を書こうと思っているうちにずるずると後回しになりました。
 エログロ・ナンセンスな政治スキャンダル劇。韓国人はこういうのが好きなのか、なぜか歴代1位(R指定作品のなかでという限定付き)のヒットを収めたという。

 次期大統領選挙をめぐる裏金騒動にまつわる暴力と復讐の連鎖が本作のテーマ。主人公のイ・ビョンホンはハリウッド映画に出るときはすぐに裸になるが、本作では服を着たままです(笑)。そのイ・ビョンホンはヤクザの幹部であり、裏切りや失敗の付けを負わされて片手を切断されるという痛い役。彼にからむのが好青年ふうの若き検事チョ・スンウ。彼はどこかで見たことのある顔だと思ったら、「マラソン」(2005年)の主人公役を演じていたのだ。えらく成長したもので、すっかり大人です。 

 政治スキャンダルの中身というのは、大企業ミレ自動車の会長とマスコミの大御所とがこぞって次期大統領候補に裏金30億ウォンを献金する、というもの。さらにこの連中は下品極まりない性接待の宴会を繰り広げるのだが、その場面があまりにもばかばかしいので声を出して笑ってしまった。ここまでくるとほとんど冗談なので、その下劣漢ぶりのステレオタイプが韓国では受けたのだろうか。「現実の政界はここまで腐っていない」と安心した観客が多かったかも? 

 政財界の癒着を追及するのが若き検事のチョ・スンウ。かれはコネがないのに検事になったものだから、出世できない。出世できないということが彼にとって最大の短所でありルサンチマンの源であり活力源でもある。出世のためならなんでもしてやるぞ、という下心旺盛な彼もまた決して清廉潔白な正義漢などではない。そもそもこの映画には見ていて気持ちのいい人物なんて一人も登場しない。しかし、巻頭の場面で義手のイ・ビョンホンが現れて以来130分をノンストップで面白く見せてくれるものだから、最後の最後まで飽きもせずに笑いながら眉をひそめながら見てしまった。

 出席欲の塊のような検事の父が田舎で古本屋をしていた、というのは泣かせる設定である。コネのない検事は田舎で貧しい暮らしをしながら一生懸命勉強して、のし上がろうとしたのだろう。そういう価値観にささやかな疑問を呈して終わってくれたところがこの映画の救いだった。

 「大衆は犬と同じだ。吠えさせておけば静かになる」というマスコミ大幹部の至言には苦笑。暴力シーンが平気な人にならお薦め。

INSIDE MEN

130分、韓国、2015 
監督・脚本: ウ・ミンホ 、原作: ユン・テホ、撮影: コ・ラクソン、音楽: チョ・ヨンウク
出演: イ・ビョンホンチョ・スンウ、ペク・ユンシク、イ・ギョンヨン、
キム・ホンファ